それが終わると、ソーシャルメディアに投稿する文章や写真、動画のクリエイティブの制作。AIと一緒にサクサクと作り上げていく。ランチ後は新プロダクトのキャンペーンサイトの制作だ。イメージを手書きや音声などでAIに伝えると、質の高いデザインが出来あがってきた。
これが、生成AIを実務に活かすスペシャリスト、POSTS代表の梶谷健人が描く未来のワークスタイルだ。予約発売当日にAmazonのビジネス書ランキング1位を獲得した話題の書『生成AI時代を勝ち抜く事業・組織のつくり方』(日経BP)の著者に、話を聞いた。
──生成AIネイティブな組織とはどのようなものですか。
生成AIネイティブの組織は、1人が何役もこなす精鋭がコラボレートするチームです。メンバーは自分の専門以外にもスキルを拡張し、さまざまな領域を横断しながらマルチタスクをこなします。今までマーケター、ライター、Webデザイナー、エンジニアなど、10名くらいのチームで取り組んできたプロジェクトは、生成AIの活用によって1人でできるようになる。
大企業においても、スモールチームで各事業を担えるようになるので、ある種スタートアップの集合体のようになり、事業を増やしていく会社が成長するのではないかと思います。
──その組織における個人の働き方は?
個人が成長する方向性としては、2つあります。一つは先ほどお話したように、自分の元々のスキルに強みを持ちつつも、スーパーマルチな人材になっていく方向性。例えばクリエイターなんだけど、生成AIと一緒にマーケティング戦略や顧客のデータ分析などを行うといったイメージです。
もう一つは職人ルートで、本当にそのスキルだけに特化してトップ1%の人材として重宝される方向性です。というのも生成AIを活用しても、本当に複雑なシステム開発や人の心を揺さぶる狂気じみたクリエイティビティは生まれないので、そこはスペシャリストのスキルが必要です。
──多くのビジネスマンにとって、前者のスーパーマルチがイメージしやすいですが、その際に必要な資質は?
基盤となるビジネススキルがない人は、AIツールを乗りこなすというより、踊らされてしまいます。何かしら自分の強みと言えるスキルがあった上で、それを軸に生成AIで横に広げていくのが理想です。
例えば一流のクリエイターとビジネスパーソン同士って、語彙や業務はまったく違っても、高いレベルでディスカッションができます。生成AIで業務はある程度回すことはできますが、核となるスキルがないと、突き抜けて成長することはできません。