まずは職種の大移動を認識すること。USのマッキンゼーのレポートによると、2030年までに事務職、カスタマーサポート、セールスなどの特定の職種の10%は、丸ごとAIによってリプレイされると予測されています。僕はそれは結構コンサバな読みだと思っています。というのも2030年って、今の生成AI界隈の進化のスピードから考えると、劇的に進歩しているはずです。
日本は多少の時間差があるにせよ、同じような状況になることは予測できます。特に日本はレイオフができないので、生成AIに仕事を奪われた人材を、負債として抱えてしまうリスクが高い。その未来はある程度見えているので、今のうちからそういった職種の方々に対して、適切なリスキリングを促していかなければならない。
幸いなことにリスキリングのハードルは、生成AIによって下がっています。例えば、僕が今から本気で3カ月間勉強して、エンジニアとして働いてくださいと言われても、ChatGPTやGitHub Copilotを駆使すればなれちゃうと思うんですよ。リスキリングの必要性は上がっているが、ハードルが下がってるという状況ですね。
並行して、今とは比べものにならないぐらいに、組織における多様性の重要度が高まると考えられます。生成AIによって間違いなくなくなるのが、言語の壁。例えばHeyGenという生成AIのサービスを使えば、日本語のテキストを入力するだけで、自分が英語やフランス語を流暢に話す動画を作れます。
Apple Vision Proはまだ大きいですが、あれが眼鏡ぐらいになると、本当にリアルタイムで話しながら翻訳ができるようになる。すると、今までは言語の壁で採用できなかった海外の優秀な人材を受け入れられるようになる。ただ、言語の壁はなくなっても、文化の壁はなくなりません。例えば昔ながらの体育会系で男性的な組織は魅力的と思われにくい。今のうちから組織の風土を整えていく必要があります。
──生成AIネイティブ時代に、人間の在り方はどうなるでしょうか。
よく「AIの進化の中で、人間の存在意義はどうなりますか?」という質問を受けるんですが、その問いは人間とAIを別個のものとして扱っているので、そもそも問いの設定が間違っていて。生成AIの活用によって、効率が10倍に上がるケースはすでに出始めており、今後AIを使用しない場合と比べて100倍、1000倍の差がつくことも現実的に考えられます。能力が1000倍も違う個体同士はもはや新人類と旧人類くらいの差があります。また、脳とAIを接続する技術も発展しています。
短期的にはAppleがこれから作ろうとしてるARグラスで、瞬時に生成AIにアクセスして、生活の中でどんどん活用できるようになりますし、中期的にはイーロン・マスク率いるニューラリンクが開発しているAI搭載の小型デバイスや、アメリカ国防省のDARPAが開発している血流で脳内に運ぶナノレベルの機器などのBMI=ブレイン・マシン・インターフェイスの研究が飛躍的に進歩します。
そうなると、脳とAIの境目はほとんどなくなります。