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2024.03.10

「記憶」に深く関わるニューロン発見、脳の治療や書き換えに繋がる可能性

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最近の研究で、私たちがどのように連想記憶を発達させるかについての手がかりが見つかった。これは、アルツハイマー病などの記憶を損なう疾患に苦しむ人々にとってとても有益な可能性がある。ここでは、彼らの発見を分析し、これが近い将来再生医療の文脈でどのように利用され得るかを提案する。

私たちの記憶の大部分は、非連想的だ。私たちは、人であれ、場所であれ、物であれ、特定の対象に関する記憶を思い出し、その対象をある程度詳細に頭の中に思い浮かべる。

連想記憶はより深いレベルの記憶だ。特定の匂いが子どもの頃の旅行の記憶を呼び起こしたり、名前を聞いて特定の人と過ごした時間を思い出したりするのは連想記憶だ。つまり、私たちの主観的な経験によって結びつけられた2つの概念が結びついたものだ。

これらの複雑な繋がりはどのようにして作られるのか? 何十年もの間、脳の記憶の中心が海馬であることは知られていたが、連想記憶の背後にあるメカニズムは大部分研究されてこなかった。

ドイツのフライブルク大学のルカス・クンツ博士とその同僚らが、最近の『Nature』に発表した研究によると、内側側頭葉の特定のニューロンが人間の連想記憶と高い共活性を持つことがわかった。

つまり、2つの異なる物体の間に連想記憶を確立するとき、私たちは繰り返しの相互作用を通してその記憶を学ぶ。電車で向かい合って座っていた人の顔を覚えることができないのは、それだけでは十分な刺激にならないからだ。内側側頭葉の特定のニューロンがその人の顔を見ることを処理するために活性化するが、その記憶は海馬に刻み込まれない。

しかし、数週間あるいは数カ月にわたって毎日その人に出会っていれば、それらのニューロンは定期的に同じデータで刺激され、記憶が作られる。連想的に、電車に座っていたことを思い出すと、その人の顔も思い浮かぶかもしれないし、その逆もあり得る。

連想記憶が呼び起こされると、記憶の形成時に最初に刺激されたニューロン活動が、海馬の活動とともに再び活性化される。この脳波パターンは、しばしば睡眠中の回想の瞬間に引き起こされる。
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翻訳=酒匂寛

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