今回の発見を発表したケンブリッジ大学のブログ記事によれば、アストロラーベは「世界初のスマートフォン」のようなものであり、「何百もの用途に使えるポータブルコンピューター」だったという。宇宙を2次元モデルで表現したアストロラーベを使うことで、星の位置を特定したり、時間と距離を測定したり、ホロスコープ(占星図)をつくることができた。
稀有なアーティファクト
この珍しいアーティファクト(人工遺物)は11世紀のものだが、特定されのはケンブリッジ大学歴史学部のフェデリカ・ギガンテ博士が、ヴェローナにあるFondazione Museo Miniscalchi-Erizzo博物館のウェブサイトにアップされていたアストロラーベの画像を見ていたときだった。同博物館はこれを偽物であると疑っていたが「今やこれはこの博物館で最も重要な所蔵品です」とギガンテはいう。「ヴェローナのアストロラーベ」に関する彼の知見は、3月1日のNunciusに掲載されている。
刻まれた文字から見て、そのアストロラーベは11世紀のスペインでイスラム教徒が支配していたアル・アンダルス、現在アンダルシア地方として知られている地域のものと思われる。しかし、アストロラーベに書き加えられたヘブライ語の刻印は「この機器がスペインあるいは北アフリカを離れ、イタリアの離散ユダヤ人コミュニティの中で使用されていた」ことを示唆している。そこではアラビア語は理解されておらず、ヘブライ語が使われていたためだ。
分点歳差
「ヴェローナのアストロラーベ」に描かれた星々は、11世紀後半に星があった位置を示している。地球の自転軸は、コマと同じように、長い間にごくわずかだけふらつき、2万5920年ごとに同じ位置に戻ってくる。これを分点歳差と呼ぶ。つまり、北極星は現在はポラリスだが、時間とともに変わることを意味しており、その他すべての星の位置も同様に変わる。「私たちから見える星の位置は絶えず変化しています。およそ70年に1度ずつ」とギガンテはいう。このため、アストロラーベの星の位置を分析することで、機器が作られた大まかな時期を推測することが可能になる。星は11世紀終わりごろの位置を示しているようであり、これは紀元1068年に作られた別のアストロラーベと一致している。
(forbes.com 原文)