地球を酸素豊かな惑星に変えた、生きた「ストロマトライト」を中東の浅海域で初発見

オーストラリアのシャーク湾に生息するストロマトライト(Getty Images)

微生物が形成する構造体「ストロマトライト」は、30億年近くにわたり地球を支配していた最初期の生物の地質学的記録を示すものだ。

ストロマトライトは一般に、層状構造を持つ岩石に付随する種々の微生物群集のことを指す。ストロマトライトは現在も地球上に生息しているが、現生種は比較的小型になる傾向がある。また、現生種は海中に浮遊する砂粒などの砕屑物を捕捉して受動的に成長する。

それに対し、古代のストロマトライトは、周りの水からカルシウムと二酸化炭素を能動的に取り込み、周囲に無機物を沈殿させて、大型のマット状に成長したり、ドーム状の構造を形成したりすることができた。

ストロマトライト化石の断面。層状構造が見える(D.Bressan)

ストロマトライト化石の断面。層状構造が見える(D.Bressan)

現在では、世界にまばらに分布する希少な「生きている」現生ストロマトライトは概して、極めて厳しい環境に追いやられている。

国際チームによる今回の最新研究では、紅海にあるサウジアラビア・シェイバラ島で、浅海域に生息する生きたストロマトライトを発見したと報告している。

シェイバラ島のストロマトライトは、島の海に面した側にある遠浅の海岸の潮間帯から浅い潮下帯までの領域に生息している。潮間帯は満潮時の海面と干潮時の海面の間の地帯で、潮下帯はそれより下の海域のことだ。生息域の水深に応じて、次の3種類の異なる成長形態を示す。平らな微生物マット、卵形の塊、ゴツゴツした微生物マットで、これは古代のストロマトライトに似ている。

サウジアラビア・シェイバラ島のストロマトライト。生息域(A)に3種類の成長形態(B–C、D–E、F–G)が見られる(Vahrenkamp, V., et al., 2024/Geology, Licensed under CC-BY-NC)

サウジアラビア・シェイバラ島のストロマトライト。生息域(A)に3種類の成長形態(B–C、D–E、F–G)が見られる(Vahrenkamp, V., et al., 2024/Geology, Licensed under CC-BY-NC

ストロマトライトは、ラグーン(浅い湖)で繁栄している可能性が高い。ラグーンは水の塩分濃度と酸性度が非常に高く、環境が古代の地球に似ている可能性があるからだ。

初期のストロマトライトは、地球の酸化(大気中の酸素濃度の上昇)に大きな影響を及ぼした可能性が高い。20億年以上もの間、太陽光と水と二酸化炭素を利用して酸素を生成することで、今日知られているような酸素が豊富な惑星へと地球を変貌させた。

今回の研究をまとめた論文「Discovery of modern living intertidal stromatolites on Sheybarah Island, Red Sea, Saudi Arabia」は、地質学専門誌Geologyに掲載された。論文はここで閲覧できる。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事