アタカマ高地は海抜3000mを超える高原砂漠で、アンデス山岳地帯のさらに高い山々に囲まれている。この辺りは、地球上で最も乾燥した環境の1つだ。雨はめったに降らず、日光が容赦なく降り注ぐことにより、ほとんどの動植物が生存できない環境が形成されている。そのため、斑点が何らかの植物や人為的なものである可能性は低かった。
この謎を解明するために、ハイネックは環境コンサルティング企業PUNA.BIOの共同創立者で微生物学者のマリア・ファリアスとともに、この地域に足を運んでみることにした。
舗装されていない道をクルマで走り、ぬかるみの中を徒歩で進み、何時間もかけて現地に到着すると、斑点に見えたのは、互いにつながった12のラグーン(浅い湖)であることがわかった。このラグーンには特異な微生物の群集が生息しており、浅い水域に巨大なドーム状の岩を形成している。
ハイネックの予備的な観察では、この微生物群集は、35億年以上前の地球に生息していた最古の生命の痕跡であるストロマトライトに似ている可能性があることが示唆されている。
コロラド大ボールダー校の地質学部と大気宇宙物理学研究所(LASP)の教授を務めるハイネックは「このラグーンは、地球最古の生命の痕跡を示す、現代における最良の例の1つかもしれない」と説明する。「これは、私自身が今までに見たこともないようなもので、あるいは実際に、どんな科学者でもこれまでに見たことのないようなものだ」
ストロマトライトとは一般に、さまざまな微生物群集に関連する層状構造の岩石のことだ。現在の地球にも、カリブ海の島国バハマやオーストラリアの海岸沖などに存在するが、現生ストロマトライトは、比較的小型になる傾向がある。また、海中に浮遊する砂粒やその他の砕屑物を捕捉して受動的に成長する。
それに対して、古代のストロマトライトは、高さが6mにまで達することができた。周りの水からカルシウムと二酸化炭素を能動的に取り込み、周囲に無機物を沈殿させたのだ。