サイエンス

2024.01.09 15:00

衛星画像を研究する科学者、35億年前から「時が止まった土地」を発見か

アタカマのラグーンに見られるドーム状の堆積物は、現生ストロマトライトよりは古代の微生物群集にはるかによく似ていた。サイズが大型で、幅4m高さ数mに達するものもあり、茶からピンク、緑へと色が変わる層状構造を示している。これらの色は、微生物群集の違いを表している。茶色は酸素を必要としない嫌気性の微生物、ピンク色は耐塩性の微生物、緑色は光合成独立栄養のシアノバクテリアで、ストロマトライトの外層を形成している。

微生物群集が、なぜこのような過酷な場所で形成されたかについては不明だ。このラグーンの環境が、古代の地球の状況に似ているのかもしれないと、ハイネックは指摘している。ラグーンの水は塩分濃度と酸性度が高いうえに、標高が高いために強烈な太陽放射にさらされることにより、特殊な微生物しか生存できないようになっている。

ハンマーで割られたストロマトライト。中心のピンク色の層が見えている(Brian Hynek/University of Colorado Boulder)

ハンマーで割られたストロマトライト。中心のピンク色の層が見えている(Brian Hynek/University of Colorado Boulder)

2023年12月に開かれた米地球物理学連合(AGU)年次総会で最初の研究結果を発表した研究チームは、できるだけ早くこのラグーンを再訪したいと考えている。

しかしながら、残り時間が少なくなっているかもしれない。アルゼンチン国外の企業が、蒸発する水から沈殿するリチウムや他の希少元素を採掘する目的で、すでにこの地域の土地を賃借しているからだ。

「他に類を見ないこの生態系全体が、数年のうちに消失してしまうかもしれない」と、ハイネックは話している。「この場所の一部を保護するか、もしくはせめて、永久に失われたり絶えず乱されたりする前に、そこにあるものを詳細に伝えることができるように望んでいるところだ」

追加資料とインタビューはコロラド大ボールダー校から提供された。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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