宇宙

2023.12.12 17:00

「光合成」は太陽系外の地球型惑星でも起こるのか?

NASAのルナー・リコネサンス・オービター(LRO)探査機が月周回軌道上から撮影した地球(NASA/Goddard/Arizona State University)

NASAのルナー・リコネサンス・オービター(LRO)探査機が月周回軌道上から撮影した地球(NASA/Goddard/Arizona State University)

宇宙から見た地球は、真っ青な海が広がり、南極を含むあらゆる大陸に緑色の植物が茂る、まさに楽園のようだ。だが、地球に似た惑星であれば、酸素を作り出す植物も生育しているはずと考えるのは先入観だろうか。

光のエネルギーを吸収し、炭化水素の形で化学エネルギーに変換する光合成の反応過程は、酸素分子(O2)を生成するか否かで2種類に分かれると、米アリゾナ州立大学の宇宙生物学者アリエル・アンバーは、筆者の取材に応じた電子メールで説明している。

酸素発生型光合成は約24億年前、地球の緑化につながった大酸化イベント(酸素濃度の急増現象)に大きな役割を果たしたと考えられている。大酸化イベントはおそらく、地球上に酸素呼吸をする複雑な生命が出現するきっかけとなった。

地球では、酸素発生型光合成の進化が、複雑な生命の出現に不可欠だったと、アンバーは言う。その理由は、複雑な生命は好気呼吸から得られるエネルギーを必要とするからだ。地球大気中のO2濃度の上昇は、生物によるO2生成(酸素発生型光合成)がなければ不可能だっただろうと、アンバーは指摘する。

だが1996年、海洋性藍藻の一種アカリオクロリス・マリナが、葉緑素のクロロフィルaの代わりにクロロフィルdを優先的に用いることが発見された。クロロフィルaは、波長域400~700ナノメートル(nm)の可視スペクトルの光を吸収するが、可視光域におけるより赤色部分の波長700~750nmの光は吸収効率が低下する。

一方、クロロフィルdは、吸収波長スペクトルをさらに40nmほど赤色側に、ほぼ近赤外光の範囲にまで広げていると、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙研究所の生物気象学者ナンシー・キアンは、スペイン領カナリア諸島で開かれた欧州宇宙生物学学会(EAI)例会でのインタビューで筆者に語った。

つまり、酸素発生型光合成に利用できる光子エネルギーの限界が、これまで考えられていたのとは異なっていることを意味する。これは、太陽に比べ可視域のエネルギーが低く赤外域のエネルギーが高い恒星に、光合成がどのように適応できるかの一例を示していると、キアンは言う。

酸素非発生型光合成では、すでに近赤外光が使われている。問題は、酸素発生型光合成が、近赤外域のどのくらいの範囲まで利用できる可能性があるかだと、キアンは指摘する。
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翻訳=河原稔

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