宇宙

2023.12.08

木星の巨大海洋衛星ガニメデで「有機物」を検出 NASA探査機

木星最大の衛星ガニメデ。NASAのジュノー探査機が2021年6月7日のフライバイ時に撮影(NASA/JPL-Caltech/SwRI/MSSS)

木星の巨大な衛星ガニメデの表面に無機塩類と有機化合物が存在することを、米航空宇宙局(NASA)の探査機ジュノー(Juno)の最新データが示唆している。

専門誌Nature Astronomyに掲載された、今回の研究をまとめた論文によると、この研究成果は、惑星天文学者らがガニメデの起源と地下海の組成に関する理解を深める助けになる可能性がある。

研究に用いた赤外線観測データは、2021年6月7日にジュノーがガニメデ上空の高度1046kmをフライバイ(接近通過)した際に収集された。

米サンアントニオにあるサウスウェスト研究所でジュノーの主任科学者を務めるスコット・ボルトンは「磁場で保護された緯度領域の暗い地形と明るい地形に、塩類と有機物が最も多く存在することが明らかになった」と説明。ガニメデは太陽系で唯一の磁場を持つ衛星だ。「これは、氷で覆われた天体の表面に到達した、地下海の塩水の残留物が見えていることを示唆している」と述べた。

2016年から木星の周回軌道上にあるジュノーは現在、木星の衛星の一部に定期的に接近するミッションの段階にある。10月には、木星の火山衛星イオへのフライバイ(接近通過)を実行した。

ガニメデに関してわかっていること

木星の衛星約79個の中で最大のガニメデは、太陽系で調査対象とすべき特異な天体だ。

直径5268kmのガニメデは、太陽系内で最大の衛星で、9番目に大きな天体であり、惑星の水星や準惑星の冥王星より大きい。

大気と内部ダイナモ機構を持ち、氷殻の下にある複数の氷層の間を循環している地下海がある。氷の下約160kmのところにあるこの海には、地球の海水の総量を上回る水が存在する可能性がある。ガニメデの海は、1990年代にNASAの探査機ガリレオによって最初に発見された。

2021年7月には、ハッブル宇宙望遠鏡の過去の観測データを用いて、氷から直接変化(昇華)した水蒸気が、氷の表面から放出されているのを検出したとする研究結果が発表された。

2022年5月に論文共有サイトarxivに掲載された研究論文では、ガニメデの表面に見られる多数の凹みや溝状構造や縞模様は、直径が最大150kmの巨大天体との衝突によって生じた可能性があることが明らかになった。

今まさに探査機がガニメデに向かっているのはなぜか

4月に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)の総費用17億ドル(約2500億円)のJUICE(木星氷衛星探査計画)探査機は、ミッション最終段階の2034年末から9カ月間、ガニメデの周回軌道に投入される。成功すれば、月以外の衛星を周回する初の探査機となる。

JUICEはガニメデの周回軌道に入るまでに、木星を67周する間にエウロパを2回、カリストを21回、ガニメデを12回フライバイする予定だ。

ガニメデを詳細な観測によって調査することで、惑星科学者らが太陽系やその先にある他の遠方の衛星や準惑星に関する理解を深めることができると考えられる。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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