宇宙

2024.02.28

太陽系で新たな衛星を発見 海王星に2つ、天王星に1つ

天王星(左)と海王星の「本当の色」に再処理された画像(Patrick Irwin/University of Oxford)

太陽系で、3つの自然衛星が新たに発見された。2つは海王星の衛星、残る1つは20年以上ぶりに見つかった天王星の最小の衛星だ。

チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡を用いた今回の発見を主導した、同天文台を運用する米カーネギー研究所のスコット・S・シェパードは「新たに発見された3つの衛星は、地上の望遠鏡を用いて2つの巨大氷惑星の周囲でこれまでに見つかった中で最も暗い」と説明している。「このような暗い天体の存在を明らかにするには、特殊な画像処理が必要だった」。今回の発見には、5分間の露光を数時間にわたり何十回も繰り返さなければならなかった。

シェパードのチームが発見した衛星は次の3つだ。

・天王星の衛星「S/2023 U1」、直径8km、公転周期680日
・海王星の衛星「S/2002 N5」、直径23km、公転周期約9年
・海王星の衛星「S/2021 N1」、直径14km、公転周期約27年

新たに発見された天王星の衛星「S/2023 U1」(下の画像の黄色矢印の先にあるかすかな白点)。2023年11月4日にマゼラン望遠鏡で撮影(Scott Sheppard)

新たに発見された天王星の衛星「S/2023 U1」(下の画像の黄色矢印の先にあるかすかな白点)。2023年11月4日にマゼラン望遠鏡で撮影(Scott Sheppard)

天王星の新衛星

シェパードは2023年11月4日にS/2023 U1を初めて発見したが、自身が2021年にマゼラン望遠鏡とハワイのすばる望遠鏡を使って撮影した画像にも写っていることを明らかにした。今回の発見により、天王星の衛星の総数は28となった。

天王星の6大衛星はアリエル、ウンブリエル、チタニア、オベロン、パック、ミランダで、最初の4つには地下海が存在すると考えられている。米航空宇宙局(NASA)の大型探査計画の1つに提案されている天王星の周回探査機は、これらの衛星が海を持つ天体かどうかの調査に重点を置く可能性が高い。

既存の衛星と同様に、S/2023 U1もゆくゆくは、英劇作家ウィリアム・シェークスピアか英詩人アレキサンダー・ポープの作品の登場人物にちなんで命名される見通しだ。だが、天王星(ウラノス)は、ギリシャ神話の神に由来する名前を持つ太陽系で唯一の惑星(他はローマ神話)だ。ウラノスはギリシャ神話の天空神で、土星サターンの父、木星ジュピターの祖父にあたる。

海王星の女神たち

海王星(最近の研究で本当の色は青でないことが判明)の衛星は今回の発見により、全部で16となった。中でも最も有名な衛星はトリトンだ。トリトンは海を持つ天体と考えられており、生命の痕跡を探すための、太陽系全体で最も有望な場所の1つだ。

海王星の既存の衛星(ナイアド、タラッサ、デスピナ、ガラテア、プロテウスなど)と同様に、今回新たに発見された2つの衛星も「ネレイド」と呼ばれるギリシャ神話の海の女神たちにちなんで命名される見通し。

衛星の一覧表

惑星天文学者らが衛星の一覧表を完成させるのは、地球に近い惑星に比べて外惑星の海王星や天王星の方がはるかに難しくなる。木星では直径約2kmの衛星がすべて見つかっている一方、土星では3kmまでだ。だが、天王星と海王星では、それぞれ8kmないし14kmとなっている。その原因の1つは、木星と土星は探査機が何回も訪れているのに対し、天王星と海王星はNASA探査機ボイジャー2号がそれぞれ1986年と1989年に1回だけしか訪れていないからだ。

2030年代に珍しい惑星の配置が起こるため、探査機を木星でスイングバイさせて天王星と海王星に送り込む機会が得られる可能性がある。だが、2040年代までに天王星に到達させるには、2030年代初頭までに探査機を地球から打ち上げる必要がある。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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