2024.03.05 11:30

伝統的な自動車メーカーがEV販売に苦戦する理由と「安価な中国製EV」の脅威

BYDドルフィンの価格は中国では約210万円から(画像:BYD)

高価格の理由はバッテリー

2020年に市場を見ていた時は、2024年の今頃にはバッテリーセルのコストも下がり、バッテリー式EVと内燃エンジン車の価格差が同程度になると、筆者は予想していた。バッテリー容量1kWhあたりの価格が100ドル(約1万5000円)を下回るタイミングが、バッテリー式EVが内燃エンジン車より安くなる転換点であり、それ以後は勝負がついたも同然になるはずだった。しかし、リチウムイオン電池の価格は2022年に1kWhあたり平均161ドル(約2万4000円)までわずかに上昇し、2023年には1kWhあたり119ドル(約1万8000円)まで下がったものの、2020年以降の経済ショックのため、予想どおりにはなっていない。
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エネルギー関連のデータや分析を提供するブルームバーグNEFでは、2025年には1kWhあたり113ドル(約1万7000円)になり、2020年代の終わりまでに80ドル(約1万2000円)まで下がると予想している。つまり、あと数年先になるが、バッテリー式EVと内燃エンジン車の価格差が同程度になる時は近づいている。

また、エネルギー密度の低いリン酸鉄リチウムイオン電池(正極にコバルトやニッケルのようなレアメタルではなく、リン酸を用いるリチウムイオン電池)なら、2025年に1kWhあたり100ドルに達することが予想され、メルセデス・ベンツの新型商用バン「eスプリンター」のように、この電池を採用した車種が増えていることも注目に値する。
テスラ・モデルYは、2023年に世界で最も売れたEV(画像:Tesla)

テスラ・モデルYは、2023年に世界で最も売れたEV(Tesla)

しかし、今のところ、バッテリーパックの価格は、EVの高価格な位置づけと、より安価なモデルの不在により、EVの販売が依然として抑制されるだろうということを意味する。

テスラ・モデルYは、2023年に世界で最も売れたEVだが、そのテスラでさえ、この影響と無縁ではない。同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスクは2020年に、2万5000ドル(約380万円)のテスラ車を3年以内に発売できるだろうと語っていたが、そんなクルマ(モデル2という車名になるのだろうか?)が間もなく登場するという噂はあるものの、マスクの言っていた「3年以内」を過ぎた今も、まだ発売されていない。おそらくマスクの予想より少なくとも2年は遅れるだろう。
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翻訳=日下部博一

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