2024.03.05 11:30

伝統的な自動車メーカーがEV販売に苦戦する理由と「安価な中国製EV」の脅威

日下部博一

求められる低価格EV

伝統的な自動車メーカーは、自社の同クラスの内燃エンジン車の代替としてEVを選ぶように顧客を説得することに関して、さらなる大きな問題を抱えているようだ。メルセデス・ベンツの場合、同社のEVは非常に効率的で未来的に見えるにもかかわらず、販売面ではそれほど順調とは言えない状況が続いている。

同社は2023年に米国で35万1746台の新車を販売し、EVの販売台数は2022年比で248%増加したが、それでも新車販売台数全体に占めるEVの割合は15%に過ぎない。その原因の一部は、車両価格の差にある。例えば、メルセデス・ベンツの高級EVセダン「EQS」の英国での価格は10万5610ポンド(約2020万円)からだが、化石燃料で走る「Sクラス」セダンの価格は9万3920ポンド(約1800万円)からだ。内装も内燃エンジン版Sクラスのほうが豪華だという意見もある(日本ではEVの「EQS 450+」が1563万円から、それに性能が近いディーゼルエンジンを搭載する「S 450 d 4MATIC」は1518万円から)。

メルセデス・ベンツEQSは、期待されたほど順調には売れていない。

メルセデス・ベンツEQSは、期待されたほど順調には売れていない(Mercedes-Benz)

英国はそれでも、欧州の中ではEVの割合が多いほうだ。メルセデスが英国で販売した新車の22.5%がEVだったが、さらにうまくやっているブランドもある。同じドイツのBMWは2023年に米国における販売の19.5%をプラグインハイブリッドとバッテリーEVにシフトさせたが、英国では全販売台数の25%がバッテリーEVだった。

より安価なEVも、いくつかの欧州ブランドから発売される。ルーマニアの自動車メーカーでルノー傘下のダチアは「スプリング」というコンパクトEVを間もなく英国に導入する。フォルクスワーゲンは手頃な価格の「ID.2all」をコンセプトカーというかたちで発表したが、市販化は2025年になる予定だ。
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翻訳=日下部博一

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