しかし、その発表は、すぐには終わりそうにない厳しい不景気の中で行なわれた。ドイツは今後、難しい財政運営を迫られることになると専門家は見ている。
オラフ・ショルツ首相は今年2月、ドイツの防衛支出について、NATO加盟国の目標とされる「GDP比2%以上」に引き上げると改めて約束していた。
これはもっともな話に思える。だが、欧州連合(EU)に隣接するウクライナがロシアの侵攻から自国の領土を守るべく奮戦してきたこの2年間、ドイツの防衛費はこの水準を下回っていた。
それだけでも問題だが、実はドイツは1990年10月に東西統一されて以降、一度もこの2%という目標値を達成たことがなかった。経済情報サイトのトレーディング・エコノミクスによると、ドイツの防衛予算は1991年に目標一歩手前の1.99783%を記録して以降ずっと、2%にはるか及ばない状況が続いてきた。
とはいえ、米シンクタンクのランド研究所が2024年1月に公開したリポートを見ると、状況は順調とは言えないようだ。昨年11月にドイツが発表した国防政策指針と国家の現状が、以下のように分析されている。
「これはかなり大胆な宣言であり、ドイツがウクライナ支援に関して大きく前進したことは明らかだ。だが、ではドイツに真の意味で自国を変革するだけの財政的余裕があるかといえば、それはまた別の問題だ。資金と武器はようやくウクライナに届き始めたが、支援により枯渇した独連邦軍への補充は、より困難な課題であることが判明している」
ショルツ首相は2022年2月、連邦軍強化のために1000億ユーロ(当時のレートで約13兆円)の特別基金を創設すると発表した。だが、ランド研究所のリポートによれば、独議会が任命した防衛オンブズパーソンは、この3倍の額が必要だと主張しているようだ。
リポートは続けてこう指摘している。「防衛支出に関する公約は、すでに押し戻されつつある。連邦政府は当初、ウクライナ支援用の武器をするため予算内に特別基金を計上すると約束していたが、昨今の財政危機を受けて、今やこれらの武器は連邦軍の近代化を目的とした1000億ユーロの基金を通じて提供するほかなくなった」