ロシア侵攻後のエネルギー費用の上昇により、ドイツでは広範な産業基盤にブレーキがかかり、経済はまるでひっきりなしにエンストを起こす車のように失速した。2023年第1四半期の経済成長率は0.1%だったが、結局これがこの年最高水準だった。トレーディング・エコノミクスによると、その後6カ月間にわたるゼロ成長を経て、第4四半期には0.3%のマイナス成長を記録した。
状況は2024年も好転しないとトレーディング・エコノミクスは予測している。これが何を意味するかというと、端的に言って、ドイツ政府は予算に関して厳しい決断を迫られるということだ。
さらに、欧州中央銀行(ECB)の判断が打撃となる可能性が高い。英コンサルティング会社キャピタル・エコノミクスの今年2月のリポートによると、ECBは「インフレという猛獣が手なずけられた」との確信が100%得られるまで、金利引き下げを延期するとみられる。リポートは次のように指摘している。
「各種調査で示された最近の物価上昇圧力の高まりや、先頃発表されたドイツの賃金の伸びからみて、基調的インフレ圧力が十分なペースで緩和しているとECBが確信するエビデンスはまだ不十分だと考えられる。政策立案者は拙速な利下げには慎重な姿勢を維持するだろう」
だが、この問題は一筋縄ではいかない。利下げの先送りで借り入れコストが高止まりすれば、ドイツを含むユーロ圏の経済は停滞とインフレを併発する「スタグフレーション」に悩まされる恐れがある。
迫り来るロシアの脅威から欧州を守るべく軍の強化を図るドイツに対して、過酷なインフレはどのような影響を与えるのだろうか。これは、世界にとって重大な問題だ。
(forbes.com 原文)