アジア

2024.02.29 13:15

韓国で「医療戦争」が勃発 政府の医学部増員に医師たちが大反発

韓国の医療水準は高いが、診療費は日本や米国に比べて安い。筆者の周りでもよく在米韓国人の親戚が韓国に来て1カ月ほどさまざまな治療のため通院することはよくある。美容整形や皮膚科も韓国が安いといわれている。

また、韓国には「実損保険」という損害保険に加入している人が多い。実損保険は、疾病または障害などで治療する際、保険加入者に発生した実際の診療費を保険会社が補填してくれるという商品だ。

前述の「給付と非給付の混合診療の制限」とは、重傷ではない非給付項目を給付項目と一緒に診療することを禁止することだ。給付項目には健康保険が適用され、非給付項目は健康保険が適用されない。

そして「混合診療」とは、たとえば、リハビリの患者に非給付項目の理学療法と、給付項目の物理療法を一緒にさせることをいう。これまで整形外科では、リハビリ患者には、理学療法と物理療法をどちらも同日にさせてきた。非給付項目は「言い値」であったので、病院にとっては稼ぎ頭ともいえる。制限されれば、これまで稼ぎ頭だった非給付診療ができなくなる可能性が高い。

政府が非給付項目を制限する理由は、実損保険により保険会社の損害率が悪化しているからである。実損保険に加入している人たちは、病院側が非給付項目を高額にしても保険会社が補填してくれるので負担にならない。従って、実損保険さえあれば、病院と患者はウィンウィンの関係になれた。そして、理学療法や老眼手術など、実損保険が効く非給付項目の費用が高騰し、保険会社の収支が悪化した。筆者は実損保険に加入していないが、少し大きな病院では実損保険手続きを手伝ってくれるブースも用意されているほどだ。

一般医の病院開業制限とは、一定水準の研修を行った医師だけに病院開業免許を与える法案などが検討されている。現在は、医科大学の教育課程を経て国家試験さえ合格すれば、医師免許を取得し、一般医として開業できる。つまり、5年間の専攻医過程を履修しなくても開業医になれたわけで、一般医の86パーセントは「皮膚科」の診療をしているという。

皮膚科は、韓国では高収入が保障される病院とされる。外見を気にする人が多く、美容整形のようにメスを加えることはなく、童顔維持できるという点で皮膚科に通う人は多い。ニキビ1つ、黒子1つでもあったら、皮膚科に通って、レーザーを当ててなくそうとするのが韓国人だ。K-POPのアーティストたちの肌のきめ細かさを見れば、韓国の皮膚科はどれだけ優秀かわかるだろう。

現在、政府は医科大学の増員申請期限を3月4日と決め、大学側に答えを迫っている。大学協会(KAMC)は、2月25日にオンライン会議を通じて増員決定の延期を議決し、教育部(省に当たる)にこの旨を伝えた。

医療改革の名のもと大刀を振り上げた政府、それに反抗する医療人たち、さて勝敗はどちらに。

文=アン・ヨンヒ

ForbesBrandVoice

人気記事