仮面浪人とは、第1志望の大学や学部に入れなかったため、とりあえず合格した大学に在学しながら浪人することをいう。特に多いのが、医科大学を目指す仮面浪人だという。
なぜ、医科大学の人気が高いかというと、専門職で生涯年収がケタ違いに高いからだ。2021年の韓国の統計庁の資料によると(Gross基準)、国民所得の中央値である中位所得は年3174万ウォン(約349万円)だが、ソウルの医師は2億950万ウォン(約2304万円)。年収として最高は全羅南道の医師で3億3854万ウォン(約3724万円)、最低は済州島の医師で1億7006万ウォン(1870万円)だ。
平均的には2億5千万ウォン(約2750万円)台である。ちなみに、2022年度の専攻医(研修医に当たる)の平均月給は397万9000万ウォン(約43万円)だ(「メディカルタイムズ」2023年1月号参照)。
多くの問題点を抱える韓国の医療界
韓国はほとんどの大学が修学能力試験(日本の共通センター試験のようなもの)の成績順でランク付けされているが、医科大学だけは別格だ。つまり下のランクの大学だとしても、医科大学(医学部)は上位ランクの大学の工学部よりずっと合格点が高い。そして無事に入学しても、専門医になる道は長くて遠い。まず、大学で6年間勉強して医師免許を取得しても、専門医になるまでは、下積みとも言える専攻医を5年ほど勤めなければならない。その間、男子の場合は軍医として兵役の義務も果たすことになる。
医師の区分けについて説明すると、韓国と日本では微妙に異なる。日本は、医師→認定医→専門医→指導医というようにより上位の肩書となっていく。韓国の場合は、医師(医師免許取得者)→一般医(専門医の資格がない医師)→専攻医(専攻科目を研修中の一般医)→専門医(専門医の資格を取得した医師)となる。
特に、最上位の専門医は、5年間の修練期間を(専攻医)を経て、保健福祉部長官が実施する専門医の資格試験に合格した医師に限られている。つまり、神経外科とかそういった具体的な科を専門にするという意味だ。ちなみに、開業医は専門医でも一般医でもできる。また専門医は「~病院」として開業できるが、一般医の場合は「~医院」となる。
現在、韓国の医療界の問題は、医師になろうとする人は多いのに、医療サービスを受けられない人たちが多数出ていることである。医療サービスの格差が生まれているのだ。しかも医師は大都市や首都圏に集中していて、小児科医や婦人科医は廃業が続出、外科を志願する専門医の減少など、他にも多くの問題点を抱えている。