「所得が低い人」ほど自然環境と触れ合いに行くメリットは大きい

米ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパーク(Shutterstock.com)

定期的に自然の中で過ごすことで得られる精神的な健康と幸福は、裕福な人よりも貧しい人のほうが大きい。

所得の多寡による健康格差を緩和するのに、自然が役立つ可能性があるとの研究結果を、オーストリアのウィーン大学ウィーン天然資源大学(BOKU大学)が発表した。毎週自然と触れ合うことと、心身のウェルビーイング(健康と幸福)との相関関係は、高所得者よりも低所得者のほうが強いことが判明したという。

この恩恵を得られるのは、積極的に自然環境を訪れたり自然と触れ合ったりする人のみで、もともと緑の多い環境に住んでいる人では効果が確認されなかった。つまり居住環境よりも、自然の中で野鳥観察やガーデニング、写真撮影、ハイキング、フリスビー、サイクリングなど何らかの活動を実際に行うことが重要なのだ。

考えてみれば、これは理にかなっている。収入の低い人は生活面で多くのストレスを抱えており、うつや不安障害といったメンタルヘルスの問題を抱えて苦しむリスクが高い。一方、メンタルヘルスを改善する方法の1つは、自然の中に身を置いて悩みを一時的にでも忘れることだ。こうした「エコセラピー」は、ストレスレベルの低下、免疫機能の向上、認知能力の改善、睡眠の改善、自尊心の向上、人生の満足度の向上に効果がある。

自然との触れ合いが身体的健康によいことは以前から知られているが、社会経済的地位の低さに関連した心理的な健康への効果のほどについては、結果にばらつきがある。たとえば、公共の公園やプライベートガーデンを利用できるかどうかがメンタルヘルスに及ぼす影響には、年齢や性別など異なるグループ間で差があったとの研究結果がある。これは、環境によって可能な活動の種類が違ったことによると推測されている。

別の研究では、社会経済的変数がうつや不安障害の重症度に及ぼす影響は、緑地の広さが違っても変わることはないが、緑地の質によって変化することがわかった。緑地や水辺の質を何が定義するかといえば、まずは魅力的かどうかだろう。魅力的な環境であるほど自然とのレクリエーション的な触れ合いが増え、緑地や水辺が近所にあることよりも精神的な健康と幸福に重要だと考えられるとする科学的証拠も複数ある。人によって魅力的な自然空間の種類も異なる
次ページ > 週1回自然に触れるウェルビーイング効果は、年収16万円アップに相当

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事