街中の広告を洋服に。「リガレッタ」はなぜ高品質なハイブランドを目指すのか

リガーレの長谷川春奈、クリエイティブディレクターの守田篤史

千鳥格子の地紋から、カラフルな色が顔をのぞかせる。

特徴的な表情を持つ生地でつくられたコートやスカート、バッグ、シューズたち。これらのアイテムは、街中に掲出され、その役割を終えたバナーフラッグ広告から生み出されている。

商品を企画・製造するのは、大丸有エリアマネジメント協会(通称Ligare、リガーレ)のアップサイクルブランド「Ligaretta(リガレッタ)」だ。
千鳥格子の地紋を使用したリガレッタのビッグコートを纏うモデルのアオイヤマダ

まちづくりから生まれたブランド

リガーレは、大手町・丸の内・有楽町エリアのまちづくりを推進する存在として、2002年に誕生したNPO。

同エリアでは、丸ビル・新丸ビルの建て替えを機に街路樹の整備や歩道幅が拡張されるなど、ハード面の再整備が進んだ。リガーレは、ソフト面の整備を担う存在として「人中心のまちづくり」を目指して設立された。

Ligarettaを担当する長谷川春奈(大丸有エリアマネジメント協会)は、「バブル崩壊後、1990年代半ばになると恵比寿や汐留、六本木などの開発が進み、丸の内から企業や人が離れていきました。通勤や商用以外で通りを歩く人もなく、ただ働くだけの街になっていたんです」と振り返る。

商業店舗の誘致など働く以外の機能を持ち始めた丸の内に対し、「公共空間を活用した賑わいづくり」と「エリア内の交流促進」のふたつの軸でまちづくりを進めたリガーレ。2019年からは道路空間を人中心の空間にする社会実験「Marunouchi Street Park」を開催したほか、ランチタイムに合わせ、丸の内仲通りでのラジオ体操、企業対抗綱引き大会なども実施してきた。その結果、平日だけではなく、休日にも人が集まるまちに変わった。

こうしたまちづくりを経て、エリア内外の企業やビジネスパーソンのつながりが生まれた。そのひとつとして、2023年1月にアップサイクルブランド「Ligaretta」が誕生。エリアマネジメント広告事業も担当する長谷川が、使用後のバナーフラッグ広告の活用方法を探していたところ、クリエイティブディレクターの守田篤史(PAPER PARADE)と出会い2021年6月にプロジェクトが動き出した。

リガーレが法人設立20年を迎えた2022年、大丸有エリアのまちづくりにおいて、リガーレが大切にする「古き良きものの継承」という価値観を体現するLigarettaを、次の20年の豊かなまちづくりを見据えた新たな取り組みの一つとして、このまちを起点に発信していくこととなりました(長谷川)
バナーフラッグは、縦1300mm×横440mm。エリア内には最大232枚が掲出できる。平均広告掲出期間は約2週間。年間で約1000枚超の廃棄フラッグが出ていた

「初めからブランド化を考えていたわけではありません。僕は以前に別のエリアでバナーフラッグの再利用に携わった経験があったので、『サンプルをもらえたら簡単なバッグをつくってみますよ』と言って、試作してみました。そしたら長谷川さんに気に入ってもらえて」(守田)

その後ネックストラップやポーチ、レジャーシートなどを制作し、ノベルティとして配布。それが好評だったこともあり、リガーレが20周年の節目を迎えるタイミングでブランド化を決めた。
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文=尾田健太郎 編集=田中友梨 撮影=小田光二

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