ファッション

2024.03.16 10:15

街中の広告を洋服に。「リガレッタ」はなぜ高品質なハイブランドを目指すのか

リガーレの長谷川春奈、クリエイティブディレクターの守田篤史

アイデアで広告主の許諾を獲得

リガレッタが目指すのは、ずばり本質を追求するハイブランドだ。その理由について、守田は次のように説明する。
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「屋外広告のアップサイクルは、どうしてもグッズ制作などの一過性のキャンペーンが多い。長く続けていくためには、ただのブランドではなくハイブランドをつくらなければならないと思いました」

アップサイクルするバナーフラッグは、合成繊維を原料にしたスウェード調の高級感のある素材でつくられている。だからこそ、ブランド設計を丁寧に行えば「みんなが憧れるようなハイブランドにできるのではないか」と考えた。

ただ、商業化するにあたっては超えなければならないハードルがあった。まず、バナーフラッグ広告の知的財産権は広告会社や制作会社に帰属するため、知的財産権の問題をクリアする必要がある。また、リガーレにとってクライアントである広告主の広告を商品として活用することになるので、許諾を得る必要もあった。

「通常バナーフラッグは、掲出の実務を担当する業者が責任を持って回収し、処分までを行うケースが多い。知財について慎重な扱いが必要なので、アップサイクルは進んでいませんでした」(守田)
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こうした課題を解決するため、守田は知財を隠すための幾何学模様の地紋を制作。広告の上にこの地紋をプリントすることで、錯視によって下地のデザインが隠れつつも色彩は残る、ユニークな生地ができた。

ヒントを得たのは、金融機関からのダイレクトメール。個人情報が透けて認識できないようにするための「柄」を見て着想したという。そうして制作した生地を、リガレッタでは「まちの物語が沁み込んだ素材」と呼んでいる。
バナーフラッグの上に千鳥格子の地紋をプリントした生地

なお、デザインは地紋ジェネレータを使って制作。そこには、「ひとりのデザイナーに著作権を帰属させない」という狙いがある。仮に守田がブランドを離れることになっても、同様の手法でアップサイクルできるようにするため。そして、リガレッタのアイテムを購入した人が誰かに譲る、あるいはリメイクして販売しようとしたときに、新たな権利問題が発生しないようにするためだ。

「廃棄物の問題はこれからも発生する。その再利用を自分の手の届く範囲だけでやると本質的な問題解決にはならない。持続可能性と拡張性を見据えたルールづくりも重要だと考えています」(守田)
広告ならではの色鮮やかさを生かしたコート(red/yellow)/9万7900円(受注販売)
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文=尾田健太郎 編集=田中友梨 撮影=小田光二

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