4歳からバレエを始め、15歳で海外のバレエスクールに留学。そこで一度挫折を経験し、コンテンポラリーダンスの道へ。帰国後の2013年からはコンテンポラリーダンサーとして活動した。
そして2015年、身につけた表現力を生かして舞台作品で女優としてデビュー。2017年には『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でブルーリボン賞など多くの新人賞を獲得した。
最近では、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で静御前役、時代劇「まんぞく まんぞく」で主演を務めた。5月6日からは『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』にも出演し活躍の幅を広げる石橋の、「表現者」としての現在地は——。
——前回のForbes JAPANでのインタビューは2020年4月。コロナ禍に突入したばかりのタイミングでした。この4年間で社会情勢が大きく変化しましたが、石橋さんご自身はどのような変化がありましたか。
コロナ禍に入る前を振り返ると、世の中の流れが速すぎて「誰も何も消化しきれないままいろいろなことが流れていって結局何にも残ってない」ということが多かったように思います。
できるだけ速く多くの情報を得ることが良いとされる、そんな価値観に対して自分は生きづらさを感じていました。なので、コロナ禍で世界中のあらゆる活動に制限がかかったことで、むしろ楽になった部分があります。
みんな1回立ち止まって「何のために働いているんだっけ?」などと、自分の生き方について考えるきっかけになったのではと思います。
私がこの仕事を始めたのは(周りに比べて)そんなに早い方ではありません。なので、元々ある「こうなったら成功、人気の証」といういわゆる“レール”に自分ははまっていないな、「私が向かう場所はそこではないし、目指す場所でもないのかもしれない」となんとなく感じていました。
それが、ここ数年の社会の変化によって、「自分はどうしたいのか」「どういうふうに生きてどういうふうに仕事がしたいのか」にフォーカスしてもいい時代になってきました。そうした時代の流れは、自分にとても合っているなと思いますね。
——現在の自分の強みはどんな点だと考えますか。
強みかどうかはわからないんですが、「どんどん仕事して、どんどん作品に出る」ということよりも、「自身の生活」の優先度が上がりました。コロナ禍でそれが揺るがないものになりましたね。
表現する仕事は、その人自身がちゃんとその人の人生を生きていなかったら、どこかで「嘘」になってしまうと思います。それが誰かの人生を代わりに演じる女優という仕事だったとしても、誰かを演じるその人自身が自分の人生を生きていなかったら、説得力に欠ける気がするんです。