Yコンビネータ出身の35歳
現在35歳のウーは、スタートアップを軌道に乗せるまでの苦労を知っている。ケンタッキー州ルイビル出身の彼女がテクノロジーに興味を持ったのは高校生の時で、スタンフォード大学ではコンピュータサイエンスを専攻し、4年生のときに起業家アソシエーションの共同代表となった。その役割の一環として、彼女はYコンビネータの運営を手伝い、共同創業者の1人のジェシカ・リビングストンと親しくなった。卒業まであと半年のタイミングでウーは、自分が何をしたいのかはっきりしないまま、進路に関する助言をリビングストンに求めたという。「自分で会社を立ち上げることができるのに、なぜコンサルティング会社なんかに進むの? と彼女に言われたのです」とウーは当時を振り返る。
ウーは、最初に立ち上げたスタートアップのAdRaid(アドレイド)で2011年のYコンビネータのバッチに合格し、スタンフォードを中退した。同社は、クリエイターが動画に広告を簡単に挿入できるようにするためのテクノロジーの企業で、デモ後の1週間で100万ドルを到達した。しかし、広告主やクリエイターの支持を得ることはできず、1年足らずで事業をたたんだ。
2013年に彼女は、フードデリバリーのDoorDash(ドアダッシュ)や清掃請負のHomejoy(ホームジョイ)などのオンデマンド型サービスのブームに乗って、洗濯代行のPrim(プリム)を立ち上げた。しかし、ベイエリアの富裕層を対象とするこの市場は思ったよりも小さく、地元のクリーニング業者との競争も激化した。その結果、ウーと共同創業者は同社を解体し、テクノロジーの一部を投資会社に売却した。
彼女はその後、Echo(エコー)と呼ばれるAndroid端末向けのロック画面アプリに軸足を移して、ようやく成功を収めた。500万ダウンロードを記録したこのアプリは、ロック画面にメールやニュースなどの通知を表示し、その通知の内容に直接アクセスできるもので、ウーは2015年にマイクロソフトに非公開の金額で売却した。「その金額は、人生を変えるほどのものではありませんでしたが、私の生涯で稼いだお金よりも多かった」と彼女は2022年のYコンビネータの講演で語った。
スタートアップで一番大事なこと
ウーはエコーを売却した後に、マイクロソフトに2年間勤めたが、大企業の出世の階段を上るのではなく、早く次のスタートアップを立ち上げようと考えていた。シアトルで彼女は、大学のインターン時代に出会った、機械学習プラットフォームCrowdFlower(クラウドフラワー)の元エンジニアのエルドマンと再開した。2人は、ブロックチェーン関連のプロジェクトを短期間試みたが、2018年から2019年にかけての暗号資産の急落で頓挫した後、2019年にプーリーを設立した。ウーにとって同社の立ち上げは、10年近くにわたる起業家としての歴史を総括するものだった。最初に広告分野で起業した彼女は、テクノロジーは理解していたが、顧客は理解していなかったという。その次のチャレンジで彼女は、洗濯機のないアパートで不便さに悩む20代の女性として、身近な課題を解決しようと考えたが、洗濯という仕事が人生を捧げるほどのものではないことに気づいた。