AI

2024.02.23

AIを活用した事業構想の「可能性と限界」

写真:Shutterstock

私たちは、イノベーションを生み出し推進するために人工知能(AI)に頼り過ぎるリスクに晒されていないだろうか。その可能性はあるだろう。しかし、イノベーションを自動化することは難しい。なぜなら、多くのイノベーションは人間同士の偶発的な出会いや出来事から生まれるからだ。

AIは、その潜在的なパワーをもってしても、ビジネスを生み出し、前進させるイノベーションの補助的な役割しか果たせないだろう。マルガリス・ベンチャーズの創業者スピロス・マルガリスは、「AIは、画期的なイノベーションの核心となることが多い偶発的な発見や関係を、完全に体系化することはできません」と語る。「AIはイノベーションのための貴重なツールですが、人間の技能や創造力と組み合わせて、包括的なアプローチをとるべきです」。

それでも、「多くの企業はAIを使ってイノベーションの過程を体系化し、独立したソリューションの採用を目指すでしょう」と彼は続ける。「私は常に、人間を含むイノベーションプロセスを主張し続けます」。

そこで私たちは、AIをビジネス形成やイノベーションの促進に役立てる方法について、マルガリスの見解を求めた。彼はヨーロッパでトップクラスのフィンテックベンチャーキャピタリストの一人であり、フィンテック(金融テクノロジー)、インシュアテック(保険テクノロジー)、サイバーセキュリティ、ヘルスケア、AI分野における多くの企業のシニアアドバイザーや投資家を務めている。その中には10億ドル(約1500億円)以上の評価額を持つフィンテックスタートアップ2社も含まれている。

AIが現代のイノベーションに果たす重要な役割があると彼は指摘する。「すでに生成AIが、新しいアイデアを試すことをより簡単に、より安く、より速くすることで、企業のイノベーションを助けているシーンを見てきました。こうしたモデルは、新しい製品の創出や既存の製品の改善に大変役に立ち、企業が異なる選択肢を迅速にテストし、最良のソリューションを見つけることを可能にします」。

だが、同時に彼は「AIはイノベーションに活用できる多くのツールの一つに過ぎません。将来的に、AIによるイノベーションは、AIが主導する洞察に人間の創造性および直感を組み合わせたものになるでしょう」と付け加える。

AIはイノベーションと効率性を促進するが、それは企業だけでなく、スタートアップや新しい会社にとっても不可欠なものだ。「膨大な量のデータを処理・分析するAIの能力は、より正確なビジネスの洞察と戦略を生み出すことができます」と、マルガリスはいう。「競争の激しい市場において、これは既存の企業にとっても新しい企業にとっても不可欠です。さらに、顧客セグメンテーション、市場分析、業務の効率化など、大量のデータ分析と自動化を必要とするタスクには、AIが非常に重要です」。
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翻訳=酒匂寛

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