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2024.02.21

サム・アルトマンが将来を信じるITインフラ企業の「地味な存在感」

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人工知能(AI)関連の企業が巨額の資金調達によって計算能力を高め、汎用人工知能(AGI)の開発競争を繰り広げる中、サンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業Meter(メーター)のCEOのアニル・バラナシは、一見するとかなり地味な目標を掲げている。それは「インターネットを稼働させ続ける」というものだ。

AWS(アマゾンウェブサービス)が過去20年間のソフトウェアブームを支えたように、安定したインターネット回線なしにAnthropic(アンソロピック)やOpenAIが追求する高度なAIは実現できないとバラナシは述べている。

「あらゆる分野で膨大なトラフィックに対応できる安定したインターネットが必要になる。AIがこのペースで進化し続けた場合、ネットのインフラをアップグレードしなければ、この分野の企業の努力が無駄になる」と彼は主張する。

バラナシが設立したメーターは倉庫や小学校のIT管理者向けに、ルーターやスイッチといった基礎的な技術を提供している。同社は設置やメンテナンスを行い、面積に応じた料金を請求している。

OpenAIのCEOであるサム・アルトマンは同社の将来性を信じている1人だ。アルトマンは、2019年にメーターの最初の資金調達ラウンドを主導し、シリーズBの延長となる最新ラウンドをStripe出身の投資家のレイシー・グルームと共同で主導した。メーターは、このラウンドで3500万ドル(約53億円)を調達したことを2月13日に発表した。関係者によると、同社の評価額は3億5000万ドル(約527億円)を超えたという。

メーターのウェブサイトには、顧客としてフィンテック企業のBrexや開発者向けソフトウェアメーカーのRetool、OpenAIのライバルであるアンソロピックなどの社名が記載されている。バラナシによると、同社は今回のラウンドと同時期に大学や水素発電関連のメーカー、ヘルスケア、Eコマースなどの大手と契約を締結しており、事業が転換期を迎えているという。

「ほとんどの企業がメーターの顧客になり得る」とアルトマンは述べたが、OpenAIが同社の顧客かどうかは明らかにしなかった。

36歳のバラナシは、37歳の兄スニルと2015年にメーターを設立した。同社のビジネスモデルは、ネットワーク業界ではやや特殊だ。100万平方フィート(約9万3000平方メートル)の倉庫にITインフラを導入するには通常100万~200万ドルの初期費用がかかるが、ブルームバーグが2022年に公表したレポートによると、同社は初期費用なしで1平方フィート当たりの月額費用を徴収している。バラナシによると、同社は現在数千万平方フィートを管理しており、25万ドルから1000万ドルの契約をターゲットにしているという。
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編集=上田裕資

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