2012年の政権交代と、それに伴うアベノミクスや黒田バズーカによってもたらされた不動産価格の高騰は、市場の三極化を進行させた。一部の不動産価格がいっそう高騰すると見られる24年には、格差はますます広がっていくはずだ。
24年の不動産市場の予測を3本立てで綴っていくシリーズ。最終回は、「三極化への備え」について記したい(過去の連載はこちら>>)。
9割の不動産価格が下落。背景に日本の深刻な問題
年明けから、日経平均株価は昇竜の如く上昇している(執筆は1月18日時点)。2023年末には3万3000円台半ばだった株価は、年始から1週間あまりで3万5000円を超えた。今ではあらゆる専門家が4万円に達すると論じており、中には5万円や10万円にも手が届くという見方を示す専門家もいる。日経平均株価は、不動産価格と連動する(下記グラフ参照)。とはいえ、連動するのは都心3区や郊外の駅前など一部のマンション価格のみで10〜15%ほど。9割近くの不動産は連動どころか下の図のように、なだらかに下落するか大きく下落する。だからこそ、市場の三極化が鮮明になっていくというわけだ。
不動産市場の三極化
株価や不動産価格のみならず、今は全面的に資産高の時代を迎えている。これはひとえに現金の価値が薄まっているからであり、不動産価格が高騰する大きな要因にもなっている金融緩和により、多額のマネーが市場になだれ込んだことに起因する。
不動産の平均価格は上位の高騰する不動産に引っ張られるため、24年も表面上は「不動産バブル」が進行することになるだろう。しかし、不動産市場全体は人口が減り続ける2050年頃まで縮小していくことを免れず、水面下では確実に格差が進行していくはずだ。
「経済合理性」と「夢や希望」……どちらを大事にするか
不動産バブルと市場の三極化に備えるには、資産価値が落ちない上位10〜15%の不動産かどうかを見極めればいいということになる。価値の落ちない不動産の条件は、1にも2にも好立地であることだ。購入するなら都心・駅前・駅近など人が減らないエリアの物件を選ぶべきだし、これに該当しない物件は速やかに売却するのが吉だろう。とはいえ、これはあくまで経済合理性を突き詰めた場合の話である。マイホームを買ったり売ったりする際、どこまで損得勘定を考えるかは人によるところだが、おそらく多くの人は経済合理性だけを考えているわけではないはずだ。今後、マイホームの資産価値が落ちるからといって、特段、不便なところがなく地域やその家に愛着を持っているなら、必ずしも「売ろう」とか「住み替えよう」といった話にはならない。そして家を買うときにまず考えるのは、家族にとって良いタイミングなのか、家族が暮らしやすいかという点ではないだろうか。
上位の不動産はすでに価格が大きく高騰していることから、手が届かないということもあるはずだ。食費や教育費を削り、休みの日にどこにも遊びに行けなくなったとしても、マイホームに資産価値の維持や上昇を求める必要があるのか。夢や希望を諦めてまで、マイホームを購入する必要があるのか。ぜひ自問自答してみてほしい。