「消費」と「投資」のベストバランスを見極める
土地と建物のうち、建物価格は当面下がる要素はない。資材価格の高騰は落ち着いてきたものの、人件費がまだ上昇する余地があるからだ。一方、多くの土地は下落していくものと考えられるが、1坪あたり50〜60万円程度の土地の価値が半分になったところで失われる価値はそう大きくない。30坪程度であれば、1000万円にも満たない計算だ。自宅を「消費」と捉えたとしても、グロスがそこまで高くないエリアであれば、地価が大きく下落しても事実上の損失は限定的である。「消費」と捉えるか、「投資」と割り切るかで自宅の選択肢は変わってくるわけだが、いずれかに振り切る必要はない。結局のところ「豊かな暮らしをしたうえで、できる限り資産価値も維持したい」と考える人が多いのではないだろうか。
住みたい場所や住む必要のある場所の中で、人口動態などを見ながらできる限り価値の落ちない場所を選ぶ。あるいは、資産価値が落ちないと考えられるエリアの中で、自分たちらしくいられる物件を選ぶ。自宅を選ぶうえでは、このように「消費」と「投資」のバランスを考えることが大事になってくるのではないだろうか。
いずれにしても、同時に災害リスクも考慮すべきだろう。災害や資産価値下落のリスクが高い場所を選ぶのであれば、防災対策を強化することは必須だ。また、手放したいときに売却できるよう購入時に頭金を多めに入れておいたり、ローン残債を減らしておいたりすることがリスクヘッジになる。
ひと昔前のように、一社に勤め上げることが王道の働き方ではなくなり、ましてや家にいながら仕事ができる時代だ。今後は複数の企業やコミュニティに携わったり、自ら事業を持ったりすることもますます一般的になるだろう。住む地域もまたコミュニティのひとつだ。自分が愛せる街に住むこと。街を愛している人が周りにいること。これらも地域や人生の付加価値になり得る。
暮らしの自由度は確実に高まっており、人々が求めることは多様化している。これからの時代、マイホームに通勤利便性の良さや資産価値が落ちないことだけを求めたり、「買えるから」という理由だけで家を持ったりすることが、必ずしも正しい選択になるとは限らない。