これら2つの動きは、ジョー・バイデン大統領が導入した中国の技術への投資規制や、先端半導体および半導体製造装置の対中輸出規制ほどの効果はもたらさない。トランプ前大統領が2018年と2019年に中国からの輸入品に課した厳しい関税を維持するというバイデン政権の決定ほどの影響力もない。だが、すでに苦境に立たされている中国にとっては、ダメ押しにつながる一撃となり得る。
中国バイオテック企業との取引禁止法案は議会で超党派の支持を得ており、おそらくバイデン大統領の署名を経て成立するだろう。この措置が中国の貿易全体に与える影響はわずかだが、習近平指導部にとって特に関心の高い国内経済部門に狙いを定めている。
強制労働に関連する製品の輸入禁止は、バイオテック企業との取引禁止より広範囲に影響を及ぼす。米下院の中国特別委員会が提言としてまとめたもので、これも超党派の支持を得ている。2022年に施行されたウイグル強制労働防止法のより厳格な運用を求め、第三国を経由して積み替えられた中国原産品にも同法を適用することや、価値が800ドル(約12万円)以下の中国の対米輸出品に対する関税免除の「抜け穴」を塞ぐことを目指している。これは些細な問題にみえるが、年間10億個以上の製品が対象となる。
どちらの措置も、米中貿易に大きく影響するものではないが、米政府内で中国への敵対心が高まりつつあることを示す重要な兆候だ。これらの取り組みが超党派で進められている点は、特に大きな意味を持つ。
それは、中国に対する敵対心が広く浸透して多くの議員の支持を得ており、11月の大統領選挙や連邦議会選挙の結果がどうであれ米国の姿勢は変わらない可能性が高いことを示唆している。米政府の対中姿勢はすでに敵対的であり、選挙結果にかかわらずトランプが導入した対中関税が停止されることはないと、改めて中国政府に通告しているのだ。また、次の米大統領が誰であろうと、中国の技術への投資禁止と先端半導体・半導体製造装置の対中輸出規制の大統領令が、何らかの形で維持されるだろうことも示している。それどころか、2つの措置が法制化されるであろうことを示唆している。