アジア

2024.02.19 08:00

米国の新たな措置、苦境の中国経済に追い打ち

荻原藤緒
一方の中国経済は、たとえわずかでも、これ以上のマイナス圧力には耐えられない。中国国家統計局によると、昨年12月の輸出は前年同月比で小幅に増加したものの、直近1年間の大半は減少の一途を辿っている。米経済の減速や欧州の景気後退懸念、中国頼みのサプライチェーン多様化をめざす欧米と日本のバイヤーの取り組みによって、中国経済には大きな圧力がかかっており、米国による新たな2つの措置は追い打ちとなる。

中国政府がしばしば言及する輸出依存型経済からの脱却はまだ実現しておらず、経済全体が諸外国の動向に対して非常に脆弱(ぜいじゃく)になっている。

輸出の減少より深刻なのは、不動産開発における失敗の影響だ。2021年に問題が表面化した際に政府が対応しなかったため、地方政府の債務超過をはじめ財政問題が累積。その結果、中国の金融は以前ほどたやすく成長を支えることができなくなった。不動産セクターの崩壊により、かつて中国経済の重要な柱であった住宅購入や住宅建設は減少している。

中国の消費者や企業では、住宅建設と輸出の落ち込みを相殺できない。不動産開発企業の経営危機は不動産価格を下落させ、家計の純資産減少と個人消費の抑制を招いている。ゼロコロナ政策の影響も残っている。定期的に経済活動が停止を余儀なくされたことで、世帯収入は不安定化した。民間企業も同じ政策と中国共産党による取り締まりの結果、事業拡大や雇用への投資に対する経営者の意欲も低下している。

中国バイオテック企業との取引禁止や強制労働製品の規制強化によって、中国経済が崩壊することはないだろう。だが、これらの措置は、すでに多くの問題に直面している中国経済に小さくとも負荷をかける。中国政府には、財政を立て直し、許容できるペースで再び経済を成長させるという難しい仕事が待ち受けている。米国の新たな動きは、そうした仕事をより困難にする。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=荻原藤緒

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