宇宙

2024.02.16 14:00

規則正しく電磁パルスを放出する中性子星の観測、超流動体研究への新たな扉を開くか

グリッチとは何か

グリッチは、自転周波数の突発的な増大として現れる。つまり、パルサーの自転速度が上昇し始めてから、また元の状態に戻るわけだと、スビエタは説明する。

ベラパルサー(PSR J0835-4510またはPSR B0833-45)は、約1万2000年前にII型のコア崩壊型超新星として爆発したと考えられており、南天の星座のほ座の方向約800光年の距離にある。ベラパルサーは、PuMAサーベイの主要な観測対象の1つだ。2~3年ごとにグリッチを起こすと見られ、過去50年以上の間に二十数回のグリッチが観測されている。

スビエタによると、グリッチが起こるタイミングにパルサーを観測していれば、パルサーの内部で何が起きているかに関する情報をより多く入手できるという。ベラはもうグリッチがいつ起きてもおかしくない頃だと、スビエタは指摘する。

スビエタによれば、自転周波数の増大は、中性子星内部の物質の挙動に関連している可能性が高い。中性子星内部の物質は、極めて高密度で、非常に圧縮されているため、超流動体と呼ばれる物質の状態にあるという。

パルサーの内部は、形容し難いような物質の混合状態であり、いまだ人類の理解が及ばないような方法ですべてがひしめき合っている。だが、中性子星内部の物質の運動により、渦が形成されると考えられている。これが、パルサーのグリッチに対する説明の1つとなる可能性がある。

ベラパルサーとその周囲にある超新星残骸がかつて、水素を燃焼する普通の恒星の一部だったとはとても信じ難い。

NASAのチャンドラX線観測衛星が捉えた、ベラパルサーから荷電粒子のジェットが噴出している様子(NASA/CXC/Univ of Toronto/M.Durant et al)

NASAのチャンドラX線観測衛星が捉えた、ベラパルサーから荷電粒子のジェットが噴出している様子(NASA/CXC/Univ of Toronto/M.Durant et al)

ベラが超新星になるまでの星の一生は、どのように始まったか?

アルゼンチンのブエノスアイレス大学と国立科学技術研究評議会(CONICET)に所属していた天体物理学者のグロリア・ダブナーは、ブエノスアイレスでコーヒーを飲みながらの取材に応じ、超新星になる前の恒星(前駆星)の性質を推測するのは非常に難しいと語った。ダブナーによると、ベラの場合、太陽の8~10倍の質量を持つ星だった可能性が高い。大質量星の恒星風によって星間物質中に形成された空洞の内部で爆発した可能性が高いという。

進化が進んだ星の中心核で、ケイ素の核融合反応が始まり、鉄ができる段階に至ると、エネルギーを放出するのではなく、星からエネルギーを吸収するようになるため、重力を支えられるものが何もなくなってしまう。

すると、中心核は自己収縮し始め、わずか1秒ほどで崩壊すると、ダブナーは説明する。中心核が臨界密度に達すると、核力が重力を圧倒し、反発を起こすことで、物質が外向きに激しく放出される。膨大な量のニュートリノによって、星のエネルギーの99%が星の外に放出されるという。
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翻訳=河原稔

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