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2024.02.05 14:15

各国識者が考える「私がAI時代に取るアプローチ」

ギル・プラット

「多くの人が心配しているのは、機械が肉体労働のみならず頭脳労働も代行するようになったら、『自分に何が残るのか?』ということです。難題ですが、私は心配していません。機械が何かをしてくれるからといって、ヒトにそれができないわけではなく、自分ですることで喜びと満足感を得られるからです」

David Becker / Getty Images

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「AIはヒトと機械の関係をどう変えると思うか?」。2017年6月にForbes JAPANの取材に応じたTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)のギル・プラットCEOは、上記のように答えている。ベル研究所を経て、MIT(マサチューセッツ工科大学)で教鞭を執ったのち、機械工学系の専門大学オーリン工科大学の立ち上げに参画した経験をもつプラットは、自分を「本質的には大学教授」と分析するほど、自他共に認める学究肌だ。そして生粋の研究者らしく、文化人類学的な視点を交えながらこう考察してみせた。

「人類が農耕社会以前の狩猟採集民であったとき、本質的な価値、つまり先史時代に生まれたときの生得的な価値は“筋肉”にあり、肉体労働ができる点にありました。生まれたときから誰もが肉体労働という資本をもち、それは他者と交換できました。ところが化石燃料が発見され、それを燃やすことにより、ヒトの筋肉が生み出す力をはるかに上回るパワーが生み出されるようになる。そしてヒトの創意工夫のおかげで、化石燃料を利用する機械が作られると、長時間の肉体労働ができるかというヒトの生得的な価値が低くなってしまったのです」(プラット)

プラットは「歴史の過程で、肉体労働から頭脳労働へのシフトがあった」と指摘しつつも、「現代も多くの肉体労働のおかげで社会は回っています」と語り、肉体労働でしか成り立たない職業からの恩恵や、スポーツでこそ得られる充足感を引き合いに肉体労働の価値の大きさを強調する。そして、「AIは私たちが頭を使ってできることを増幅させている」と、頭脳労働が機械に代替・拡張される未来を予測しながらも、頭脳を使った人間らしい営みは変わらずに続くだろうとも語った。
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文 = 井関庸介

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