生成AIには専門人材が必要
では、どちらのAIを選んで実装するか。さまざまな比較要素がありますが、今回はコストと人的リソースの観点から考えてみましょう。まず伝統的AIでは、データの収集と前処理が重要となります。具体的には、
・対象となるデータの収集
・データを解析可能な形式に処理する作業
・データをもとに目標とするタスクをこなせるモデルの作成
です。これらは一定の専門性を必要とし、特にデータの前処理には多くの時間と労力を必要とします。
とはいえ、最近ではノーコード・ローコードで実装できるツールも増えていることや、データ収集や前処理も比較的容易になってきており、生成AIよりも知が蓄積されていると言えます。
生成AIに関して考えてみると、大量のデータと強力な計算能力が必要となります。これは、高度なアルゴリズムを用いて膨大な量のデータを学習し、新しいデータを生成するためです。そのためのハードウェアやクラウドサービスへの投資で、識別AIよりもかなり大きなコストがかかります。
ただしこれは自前で生成AIを作る場合であり、既存のツールやクラウドサービスを活用することで、大きなコストとなるデータの保持やモデルの学習を省略できます。
そのためデータにかかるコストという意味では、生成AIの方が低く抑えられるかもしれません。一方、企業の社内データを活用した生成AIのシステム構築に関してはノウハウが溜まっておらず、専門的な知見のある人材やその教育にコストがかかることは否めません。
さらに、セキュリティの観点でも、専門的な人材が必要となる場面が多くあります。機密性の高いデータを扱う生成AIの運用には、データの取り扱い方やAIシステムのセキュリティなどの知見が求められます。これらの専門性を持った人材の確保や育成、また専門家へのコンサルティングの費用は、現時点では希少価値も高く大きなコストとなり得ます。
また、生成AIによって新たに創出されたデータの適切な利用方法を見つけることにも専門知識を必要とします。生成AIはビジネスの壁打ちやアイデアの発散という意味では非常に役に立ちますが、それらがビジネスへどのように適用できるかを考え、実行するためにはビジネスと技術の両方に精通した人材が求められます。
場合によっては、既存の伝統的AIのサービス導入で低コストで済むこともあると常に意識しておきましょう。
これらの判断がつきにくい場合は、外部の専門家を活用することもオススメです。多数の事例を知り、機械学習への深い知見を持っている専門家による適切なAI選択がプロジェクトの成否を決めることもあります。
いまこそ、AIのビジネス利用について再考してみてはいかがでしょうか。最新の情報とベストプラクティスを組み込むことで、成功に向けて大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。AIの力を最大限に引き出すためには、どんなAIが必要なのか考えてみましょう。
大庭清準(おおば・きよとし)◎SHIFTにおいて、業務基幹システムの品質保証に携わる。キカガクにて、社内PMOとしてバックオフィス全般やサービスの立ち上げサポートを担当した後、講師として社会人向けのAI、データサイエンスに関わるセミナーを企画立案、登壇まで行う。登壇実績は150件以上。2023年INDUSTRIAL-Xに参画。