今回は、生成AIと伝統的なAIの違いと「とりあえず生成AI」になってしまわないための観点を考えてみましょう。
チャットボットと需要予測、有効活用はどちらか
まずは、最近の生成AIの活用事例から見ていきます。1. 社内チャットボット
パナソニック コネクトは社内で活用できる生成AI、ConnectAIを自社で開発し、導入しています。これは消費者向けにリリースされているChatGPTとは違い、同社固有の情報を踏まえて回答をするAIアシスタントです。
現段階では、公開済みの自社情報のみ回答してくれるそうですが、今後は社外秘の情報も含めて回答するように進化させていく予定となっています。
2.外部向けチャットボット
神奈川県横須賀市では外部向けのサービスとして生成AIの導入が進められています。下図(横須賀市ChatGPT担当)のチャットくんは、横須賀市のChatGPTや生成AIの導入についての状況について答えるチャットボットです。市で導入しながら市のリリースもするという、アジャイルな開発が進められていると推測されます。
上記2つの例を見ると分かる通り、生成AIが持つ「自然言語の処理能力の高さ」を十分に活用しています。ただし、どちらもまだ開発途中であり、正確な意思決定が求められる場面での使用は想定していないことがうかがえます。
3.需要予測
商品開発において、既存商品に比べて新規商品は需要が読みにくいという課題があります。経験とノウハウにもとづいた予測では誤差も大きく、在庫管理にも影響を与えます。
そこで、この新商品の予測に生成AIを活用する事例が出てきています。ChatGPTのような大規模な言語モデルに独自のデータを学習させた「検索拡張生成」という仕組みを使い、文章を生成するというものです。
ただ、3つ目の需要予測は有効活用とは言えません。むしろ遠回りをしてしまっています。
過去のデータをもとにした予測は、そのデータの抽出と人間の予測方法の言語化などがされていれば、伝統的なAIでも十分な精度でできるとわかっています。
特に数値の予測に関しては、文章生成や創造性のサポートという生成AIの強みが発揮しにくい分野であることは間違いありません。