北米

2024.01.28 16:00

なぜ、米国には「第3のミサイル防衛拠点」が必要なのか

日下部博一
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もし国防総省が、フォート・グリーリーの老朽化した迎撃ミサイルすべてを、60基の次世代型の多弾頭迎撃ミサイルに交換し、東海岸にも同規模の迎撃ミサイル基地を新設すれば、米国は核攻撃から国土を守る能力を大幅に高めることができる。

国防総省は2019年、連邦議会に促されるかたちで、ニューヨーク州北部のフォート・ドラムを第3のミサイル防衛拠点の候補地として挙げた。地元選出のエリス・ステファニク下院議員(共和党)は、ミサイル防衛拠点の建設を精力的に推進してきた。

この候補地は、アラスカ州のフォート・グリーリーから5000km以上離れている。ニューヨーク州のかなり北に位置しており、ニューヨーク市より、カナダの首都オタワに近い。

しかしフォート・ドラムは、フォート・グリーリーの迎撃ミサイルを補完するのに最も適した場所だ。より高性能な次世代迎撃ミサイルを60基装備した拠点が2つあれば、100発以上の弾頭を迎撃できるだろう。

ただし、ロシアや中国の大規模攻撃を撃退するには、これでも不十分だ。攻撃的な抑止力は、今後も米国の核戦略の中心機能であり続けるだろう。

それでも、大きく離れた場所に2つの拠点があれば、北朝鮮発のあらゆる攻撃を弱めることができるし、大規模なものでなければ、ロシアや中国に端を発する不測の事態にも対処できる。

国防総省ミサイル防衛局の関係者は、第3の拠点は必須ではないと述べている。しかしそれは彼らが、ロシアや中国による中規模レベルの攻撃、例えば、1000万人の国民が犠牲になるような攻撃でさえ、打ち負かす計画を持っていないためだ。

迎撃ミサイルを追加したとしても、大規模な攻撃を打ち破ることはできないかもしれないが、外国の国家指導者たちに、先制攻撃の目的が達成可能かどうかについて考えさせることは確かにできる。

つまり、フォート・ドラムに第3の拠点を置くことは、国家安全保障に真価を発揮するということだ。2023年の連邦議会で、マーク・ミリー統合参謀本部議長(当時)は、まさにそう証言している。

ドナルド・トランプ前大統領が11月の米大統領選挙で再選されれば、この件は国防に対する姿勢がバイデン大統領とは異なることを示す手始めになるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=米井香織/ガリレオ

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