北米

2023.12.09 15:00

米国防総省の新たな「情報戦略」について知っておくべき5つのこと

日下部博一
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Getty Images

米国防総省は2023年11月、ロイド・オースティン国防長官が7月に署名した「情報環境における作戦のための戦略(Strategy for Operations in the Information Environment)」を公開した。国防総省にとって2016年以来の更新となるこの新しい戦略について、我々が知っておくべきこと、そして不十分な点などを挙げてみよう。

1. 我々は皆、情報環境の中で生きている

米国防総省は情報環境について、「情報を収集・処理・発信・使用する個人、組織、システムを含む人間や自動化システムが、情報からどのように意味を導き出し、行動し、影響を受けるかということに、影響を与える社会的・文化的・言語的・心理的・技術的・物理的ファクターの集合体」と定義している。

情報環境における作戦(Operations in the Information Environment:OIE)とは、「情報作戦(information operations:IO)」よりも広い概念だ。OIEには、他者の行動に影響を与えるために複数の情報戦力(information forces)を用いる軍事行動が含まれる。また、外国のアクター(行為主体)に影響を与えること、関係のあるアクターやネットワーク、システムに関する情報を攻撃・利用すること、友好国の情報やネットワーク、システムを保護することなどが含まれる。

情報作戦とは、軍事作戦中に、情報に関連した能力を活用して、敵対国の行動に影響を与えたり、米国の軍事的努力を保護したりすることだ。一方、OIEという用語は、より広い国防総省の判断を反映しており、国防総省が国務省やその他の政府機関とともに、国力の手段として情報を活用する方法や、敵対国が米国に対して情報を活用する方法が扱われる。

国防総省が、情報力(informational power)を統合する最良の方法を模索する一方で、各軍は、それぞれの情報に関連した能力と関連用語を、多少異なる形で整理してきた。例えば米海兵隊は、OIEという用語の使用を止め、「情報戦闘機能(information warfighting function)」という用語を用いている。

2. 情報力は後回しにされるべきではない

情報力は、国内外の武力紛争において米軍が成功する上で不可欠になる。今回発表された戦略は、軍が他の武器に比べると情報を使うことが苦手であると認識している。軍事計画者や指揮官は、情報環境での作戦を後回しにすることが多い。

同戦略は、情報力をより良く理解し、戦略、作戦、および国防総省全体の活動に組み込むための文化的転換を呼びかけている。同省は、人間や自動化システムの挙動の要因に積極的な影響を与え、軍が活動する環境を形成し、米国の正当性を強化することを目指している。
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翻訳=ガリレオ

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