3. 情報環境における脅威は増大している
米国の敵対勢力は、偽情報や策略を巧みに利用し、情報環境を操作してきた。米国の選挙プロセスを弱体化させ、米国社会に不和をもたらそうとするロシアの試みについてはよく知られている。ロシアは、広大なプロキシネットワークを通じて、米国の同盟関係や利益を損ねようとし続けている。さらに中国も、地政学的・経済的目標達成を支援するために情報力を利用しており、ソーシャルメディアを通じて米国社会の分裂につけこむべくロシア式の戦術を用いている。中国はまた、南シナ海での根拠のない主張を強化するために、情報環境における「法律戦(lawfare)」を利用している。
イランと北朝鮮はその情報力を、サイバー攻撃、策略、悪意ある影響力に集中させており、地域を不安定化させ、米国の権益を脅かしている。
4. 軍は単独では行動できない
情報環境において、米国の敵対勢力に国防総省が打ち勝つためには、パートナーシップが不可欠だ。自国や地域の言語、文化、人々を最もよく知るパートナーや同盟国との協力は、海外で軍事的成功を収めるために不可欠となるだろう。国内においては、国防総省は他の政府機関、特に情報機関や、パブリック・ディプロマシー(広報文化外交)を担う国務省と、緊密に協力しなければならない。また国防総省はこの取り組みに、学界、民間部門、非営利団体、部族政府などを参加させる計画だ。
5. この戦略は不十分
この戦略の大まかな狙いは、今後数カ月以内に、実施計画(implementation plan)として具体化される。政府関係者のあいだでは「I-Plan」と呼ばれるこの計画書には、埋めるべき多くのギャップがあるはずだ。2022年には、米国土安全保障省の「偽情報ガバナンス委員会(Disinformation Governance Board)」という、オーウェル的(全体主義的)に聞こえる委員会が物議を醸し、速やかに廃止された。これを受け、国防総省は「戦略的情報監視委員会(Strategic Information Oversight Board)」という奇妙な名前の組織の役割と責任を、透明性をもって具体化させることになるだろう。
この文書は、「外国人だけに向けた情報に、米国人がさらされる危険性」について、無造作に言及している。このフレーズには、表現・報道・結社の自由などを含む米合衆国憲法修正第1条の権利や、政府の説明責任について懸念する米国人はもちろんのこと、自分たちに真実が伝えられているかと疑っている同盟国やパートナーも、眉をひそめるはずだ。
国防総省が希望するパートナーのリストに、報道機関が含まれていないのも明らかな手落ちだ。報道機関は、国防総省よりもはるかに長いあいだ、「力の道具としての情報」を実践してきた存在であり、軍にとって失うことのできないパートナーだ。
そして、情報力を向上させるために、民間組織と軍の労働力を急増させるという国防総省の計画は、新たな雇用機会と人材募集基盤の成長、そして潜在的なリスクを意味するだろう。あらゆる戦略がそうであるように、悪魔は実施の細部に宿るのだ。
(forbes.com 原文)