北米

2024.01.28

なぜ、米国には「第3のミサイル防衛拠点」が必要なのか

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核戦争は、国家安全保障にとって最大の軍事的脅威であり、その脅威は増大の一途をたどっている。

ロシアは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を改良している。中国は、かつては最小限の核抑止力と見なされていた軍備を着実に拡大している。北朝鮮は2023年、5発のICBMの発射に成功し、潜水艦発射弾道ミサイルの実験も行っている。

米国は現在、これら3カ国のすぐそばにある諸国を守ることに力を注いでいるが、将来の危機が核戦争に発展しないという保証はない。

米国政府にとって、これは考えたくない筋書きだ。そしておそらく、そうした姿勢ゆえに米国は、ロシアや中国の核攻撃を迎撃する計画を持たず、北朝鮮の軍備増強への対策も不十分なままなのだろう。

現在の戦略は、潜在的な侵略者を、圧倒的な報復で脅し、攻撃は自殺行為だと思わせることだ。

政策立案者は、このアプローチを抑止力と呼ぶが、相互的人質(mutual hostage)関係という表現の方が適切だろう。国家が存続できるかという最大の脅威に関しては、ほぼ無防備のままであるためだ。

単刀直入に言えば、ロシアや中国、または北朝鮮が、今後数年のうちに、米国を標的に、ほんの少しでも核弾頭を発射することを選択した場合、わずか数時間で数百万人が死亡し、経済が崩壊する可能性が高い。

多くの観測筋が、そのような筋書きはあり得ないと見ているが、実際には3カ国ともに、核兵器を使用せざるを得ないと感じるであろう状況を明示している。

核戦争が起こり得る状況は、いくつもある。

・国家指導者があまりに非合理的で、抑止力が効かない。
・核兵器が誤って発射される。
・曖昧な警告が、危機のさなかで誤解される。
・反乱軍がミサイル基地を掌握する。

ほかにもいくらでも挙げることができる。これらの筋書きに共通しているのは、結果として生じる攻撃を弱める強力な手段が、米国には存在しないということだ。攻撃は、音速の何倍ものスピードで飛んでくる弾道ミサイルの形をとる可能性が高く、現在の米国のミサイル防衛システムでは、10発余りの弾頭にしか対応できない。

米国の迎撃ミサイルは、アラスカ州のフォート・グリーリー基地に集中している。カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地にもいくつかあるが、現在の基本方針では1、2発の弾頭しか迎撃できない。

危機の規模やその進化のペースを考えると、現在のミサイル防衛システムは極めて不十分だ。それにもかかわらず、米国防総省は毎年、国土のミサイル防衛に、予算の1%未満しか費やしていない。

これは言語道断であるはずだが、ワシントンD.C.の政府関係者は、核戦争の危険性についてほとんど具体的には考えていない。こうした状況が言語道断である理由のひとつは、国土のミサイル防衛を強化するための予算が、現在の連邦政府支出の1日分にしか相当しないことだ。
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翻訳=米井香織/ガリレオ

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