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2024.01.25 12:00

「試合に出たら、戦うのは相手じゃないだろ?」「第3段階ザック」が挑む大きな賭け

Forbes JAPAN編集部
エクが言うには、ザッカーバーグは自分自身にもメタに対しても「格闘技的な世界観」をもっている。経営学の教科書に載っている、敬意、意志、規律といった決まり文句とも相性がいい。だが究極的には、大人になった第3段階のザッカーバーグは、総合格闘技の別の原理に傾いている。それは、自分を知ることだ。「試合に出たら、相手と戦うんじゃなくて、自分と戦うものだろう?」とザッカーバーグは言う。「もっと良いバージョンの自分を目指すだけだ」。

ザッカーバーグは、驚くほど自由に新しい自分を追求することができる。職務上、彼に指図できる者はいない。フェイスブックは二重株式という構造を採用しているため、彼の支配は揺るぎない。現在、彼は超議決権をもつクラスB株式の99%を保有し、議決権全体の61%をもっているため、解任されることはない──説明責任すら、ほとんど負わない。

当然ながら、ザッカーバーグはこれを、欠陥ではなく、未来だと考えている。「世界の多くの企業が、多額の資本をもちながらリーダーシップや理事会の仕組みがないせいで、未来への大きな賭けに出ることができない」と彼は言う。「我々は創業者が指揮する会社だ」。

1000億ドル、約14兆円の賭け

人がいつ成熟したのかを言い当てるのは難しいが、ザッカーバーグの場合は、2021年9月に第3のマークになったといってよさそうだ。

フェイスブック株は過去最高値を記録していた。時価総額は1兆1000億ドル弱、ザッカーバーグ個人の資産は約1360億ドルに達した。メタバースへの参入はその直後だった。翌月、社名をフェイスブックからメタ・プラットフォームズに変更すると発表し、メタバースがコンピューティングの未来になるという賭けに社運を託した──創業者主導の賭けの典型である。

そして報いを受けた。以後14カ月でメタ株は75%暴落し、年間収入は初めて減少し、22年の純利益は41%下落した。ザッカーバーグの資産は330億ドルへと落ち込んだ。(続きは、Forbes JAPAN3月号で)。


マーク・ザッカーバーグ◎1984年生まれ。ハーバード大学在籍中の2004年にフェイスブックを立ち上げた。同社はワッツアップ、オキュラス、インスタグラムなど数々の巨額買収を行い、2012年に時価総額820億ドル弱で上場した。世界5位となる推定1220億ドルの資産をもつ。

文=ケリー・A・ドーラン 写真=ゲリン・ブラスク 翻訳=有好宏文 編集=岩坪文子

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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