ザッカーバーグは、驚くほど自由に新しい自分を追求することができる。職務上、彼に指図できる者はいない。フェイスブックは二重株式という構造を採用しているため、彼の支配は揺るぎない。現在、彼は超議決権をもつクラスB株式の99%を保有し、議決権全体の61%をもっているため、解任されることはない──説明責任すら、ほとんど負わない。
当然ながら、ザッカーバーグはこれを、欠陥ではなく、未来だと考えている。「世界の多くの企業が、多額の資本をもちながらリーダーシップや理事会の仕組みがないせいで、未来への大きな賭けに出ることができない」と彼は言う。「我々は創業者が指揮する会社だ」。
1000億ドル、約14兆円の賭け
人がいつ成熟したのかを言い当てるのは難しいが、ザッカーバーグの場合は、2021年9月に第3のマークになったといってよさそうだ。フェイスブック株は過去最高値を記録していた。時価総額は1兆1000億ドル弱、ザッカーバーグ個人の資産は約1360億ドルに達した。メタバースへの参入はその直後だった。翌月、社名をフェイスブックからメタ・プラットフォームズに変更すると発表し、メタバースがコンピューティングの未来になるという賭けに社運を託した──創業者主導の賭けの典型である。
そして報いを受けた。以後14カ月でメタ株は75%暴落し、年間収入は初めて減少し、22年の純利益は41%下落した。ザッカーバーグの資産は330億ドルへと落ち込んだ。(続きは、Forbes JAPAN3月号で)。
マーク・ザッカーバーグ◎1984年生まれ。ハーバード大学在籍中の2004年にフェイスブックを立ち上げた。同社はワッツアップ、オキュラス、インスタグラムなど数々の巨額買収を行い、2012年に時価総額820億ドル弱で上場した。世界5位となる推定1220億ドルの資産をもつ。