アジア

2024.01.22

中国とバフェットが高笑いし、労働者があえぐ国ニッポン

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新年に入り、日本株式会社は実にもどかしい股裂き状態が強まっている。

一方で日経平均株価は急騰し、バブル経済期以来およそ34年ぶりの高値を更新した。他方で、不祥事続きの政権は本来やるべき大胆な経済改革に踏み込まず、日本経済はリセッション(景気後退)入りする可能性が高まっている。

もっとも、こうした乖離は世界の投資家にとって目新しいものではない。だが、まさにそれこそが問題なのだ。株価と経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)のズレは、再びタガが外れてしまっているように見える。事態は大半の投資家が思っている以上に深刻かもしれない。

日本では、どうして首相が代わっても株価と経済のいびつな関係が続くのだろうかと、投資家はもう何年も問い続けてきた。リチャード・カッツの素晴らしい新著『The Contest for Japan's Economic Future(日本経済の未来をめぐる争い、未邦訳)』は、このサイクルを断ち切るための地に足の付いた処方箋を提示。なかんずく、スタートアップブームを起こして現状を打破し、変化を嫌う政治家の背中を押して日本を未来のグローバル経済の方向に向かわせることが、ぜひとも必要だと力説している。

「日本は適切なことをやれば得られるものが多く、それをやらなければ失うものが多い」とカッツは説く。「そして、誰も想定していなかったような動向、たとえば世代間の考え方やテクノロジーの変化、高齢化、低成長による政治への圧力などによって、適切なことを進める当初にともなう痛みや反発は、日本の指導者たちが恐れているよりもはるかに少なくなっているだろう」

だからこそ「これは日本にとってこの20〜30年で最大のチャンスなのだ」とカッツは強調。逆に「もし日本が、高い経済成長を促進する数多くのイノベーティブな企業を生み出すという、かつてとてもうまくやっていたことを再び実現する絶好のチャンスを捨ててしまうとしたら、なんという悲劇だろう」とも書いている。

Japan Economy Watch」というニューズレターを執筆しているカッツは、日本経済を根底から変革すると期待された安倍晋三政権の誕生以来、11年の日本の実情をきちんと整理している。

2012年12月、安倍は、サプライサイド(経済活動の供給面)のビッグバンを起こすと公約して政権の座に就いた。規制緩和、労働市場の改革、イノベーションの活性化、スタートアップブームの促進、女性のエンパワーメント、国際金融センターとしての東京の地位回復などを約束していた。

だが、安倍は続く2821日間、日本経済再生の「最後のチャンス」(彼自身の言葉)をほとんど浪費した。その期間を主に費やしたのは、アジアの未来を支配する競争でまだ手強いライバルがいると中国に思い起こさせることだった。経済復活の仕事は日本銀行に任せた。その日銀の積極的な金融緩和政策と、政府によるコーポレートガバナンス(企業統治)改善のいくつかの取り組みのおかげで、日経平均は上向き、いまにいたるまで上昇を続けている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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