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2024.01.19 10:30

イランとパキスタンが越境攻撃の応酬 「バロチスタン」の武装勢力とは?

遠藤宗生

Below the Sky / Shutterstock.com

パキスタン、イラン、アフガニスタンにまたがるバロチスタン地方で、イランとパキスタンによるミサイルなどを用いた越境攻撃が相次ぎ、にわかに緊張が高まっている。攻撃では、分離独立などを求めて襲撃を繰り返してきた複数の武装勢力の拠点が目標だったとされる。

イランは16日、バロチスタン地方のパキスタン側である南西部バロチスタン州をミサイルやドローン(無人機)で攻撃。パキスタンは18日、イラン側の南東部シスタンバルチェスタン州に空からの攻撃を加え、応酬した。両国とも、この地方の相手国側に潜んでいる「テロリスト」集団を狙ったとしている。

イランは、パキスタン側への越境攻撃の目標はイスラム教スンニ派の武装勢力ジャイシュ・アルアドル(JAA)だったと説明している。米国家情報長官室(DNI)の「カウンターテロリズム・ガイド(テロ対策の手引き)」によれば、JAAは「バルチ(バロチ)人の文化、経済、政治的権利をイラン政府に認めさせる」として、シーア派国家のイランに対する攻撃を繰り返し行っている。

パキスタンはイラン側への越境攻撃について、バロチ人の武装集団であるバロチスタン解放軍(BLA)とバロチスタン解放戦線(BLF)に対するものだったとしている。BLAとBLFはパキスタンからのバロチスタン州の分離独立を掲げている。

中国の権益にも反発

BLAとBLFは、パキスタンがバロチスタンの豊富な鉱物資源を収奪していると主張し、パキスタン軍や、パキスタンでの中国の権益や事業に対する襲撃を繰り返している。バロチスタンをめぐっては、パキスタンが長年、人権侵害を繰り返してきたという訴えもある。

AP通信によると、BLAはパキスタンによる攻撃後に「パキスタンは罪のないバロチ人を殉教させた」とする声明を出した。CNNによれば、BLFはイラン側にプレゼンスはなく、被害を受けた戦闘員もいないと主張した。

バロチスタンはかねて、イランとパキスタンの間で緊張の種となってきた。両国は互いに、相手側がこの地方の武装勢力に寛容すぎると批判している。パキスタン外務省は、バロチ人武装勢力がイランで活動している証拠をイラン側に提供したが、「わが国の重大な懸念に対する行動が欠如している」ため、攻撃に踏み切ったと主張している

中東では緊張が高まり続けている。イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの戦争が続くほか、イランでは今月、スンニ派武装勢力「イスラム国(IS)」による自爆攻撃で90人超が死亡した。

イランは今週、イラクとシリアを弾道ミサイルで攻撃した。シリアに対する攻撃はISへの報復だったもようだ。イラクに対する攻撃ではイスラエルの情報機関の拠点を狙ったとしており、先月、イスラエルによる攻撃でイスラム革命防衛隊の隊員らが殺害されたことへの報復とみられる。

パキスタン外務省は「イランは兄弟国であり、パキスタン国民はイラン国民をたいへん敬愛している。われわれは共通の課題に立ち向かう際、常に対話と協力を重視してきた」と述べ、イランとの緊張を抑えたい姿勢をにじませている。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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