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2024.01.22

「中東マネー」に頼る苦境の米半導体スタートアップBlaizeがSPAC上場へ

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インテルのエンジニアが立ち上げたカリフォルニア州の半導体企業は、エヌビディアのエッジ・コンピューティング・ビジネスに食い込むチップを開発しながらも、10年以上もの間、あまり目立たずに運営を続けていた。

Blaize(ブレイズ)と呼ばれる同社は、GGVなどの著名なベンチャーキャピタルやハイテク投資家のレーン・ベスから2億ドル(約296億円)以上を調達した後も、さらなる資金を必要としていた。「彼らは私のところに来て、会社を存続させるためにもっと投資してほしいと言ったのです」と、ブレイズに約2500万ドルを投資したベスは、フォーブスに語った。彼らは同社への追加出資を断ったという。

しかし、昨年夏、AIに関心を寄せる中東の投資家グループが第3の出資元に浮上した。2018年のマンハッタンのプラザホテルの買収を主導したシャハール・カーンが率いるこのグループは、湾岸諸国を卓越したテクノロジーハブに変えることを視野に入れ、AI分野に数十億ドルを投資していた。ブレイズのチップは、軍事用ドローンから自動運転車まで、あらゆるものにエッジコンピューティングを提供することが可能で、彼らの野心を強化するのに最適だった。

ブレイズは今、カーンが率いる特別買収目的会社(SPAC)のBurTechとの合併により、評価額8億9400万ドルでの上場を予定しており、7100万ドルの調達を見込んでいると先月発表した。同社は今年の第2四半期にナスダックに上場するという。

「私たちがブレイズに投資した理由は、当社のリミテッドパートナーの多くが中東出身だからです」と、カーンはフォーブスに語った。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)、カタールの王室のファミリーオフィスの出資を受けるBurTechは、世界屈指のスーパーコンピュータのハブを構築するために、莫大な資金を用意しているという。

米国の半導体輸出規制

中東の政府系ファンドは、以前からシリコンバレーの新興企業やAI分野への資金提供者として知られている。しかし、米国のチップ企業であるブレイズが、この地域の投資家と新たな関係を結ぶことは、中国が中東を経由して半導体を輸入しているとの懸念から、中東諸国への半導体輸出規制を強化している米国政府に難題を突きつける可能性がある。

エヌビディアやAMDも、政府からの圧力に直面しており、この2社は昨年8月、米国政府から中東諸国への輸出を制限されたことを明らかにした。また、11月にホワイトハウスは、OpenAIなどの米国企業と契約を結んでいるUAE最大のAI企業「G42」と中国の関係について懸念を表明したと報じられた。ブルームバーグは、バイデン政権が最近、サウジアラムコのベンチャー部門にサム・アルトマンが支援する「RainAI」と呼ばれるAIスタートアップのポジションを売却させたと報じていた。

ブレイズも同様の監視に直面する可能性がある。「対米外国投資委員会(CFIUS)を含む米国の政府機関は、この取引に関心を持ち、かなり綿密に調べるだろう」とこの種の問題で企業に助言を行うSkaddenの弁護士のブライアン・イーガンは語る。

ブレイズのCEOのディナカー・ムナガラは、同社が米国の法律を遵守すると強調した。「当社はすべての輸出管理プロセスを導入しており、チップを販売する際にはすべての規則に準拠していることを確認している」と彼は述べた。

米商務省は、フォーブスのコメント要請に返答しなかった。
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編集=上田裕資

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