AIブームに沸く中東諸国
カリフォルニア州エルドラドヒルズに本社を置き、英国とインドに拠点を構えるブレイズは、昨年9月、アブダビの王族が管理するファンドのマークABキャピタルと覚書を交わしたと発表した。同社は、アラUAEとサウジアラビアを含む湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council)からの受注により、このパートナーシップで年間5000万ドルの収益を見込んでおり、自社のAIプラットフォームで5000人のUAE国民を訓練すると述べていた。UAEを含む中東地域では、他にもAI関連の技術提携の動きが加速している。2023年初頭には、カリフォルニアを拠点とするAI企業Cerebras(セレブラス)が、UAEのG42にスーパーコンピュータを供給する1億ドルの契約を結び、それに続いてアラビア語の大規模言語モデルを開発する提携が結ばれた。
また先月は、インドのアダニ・グループがUAEのインターナショナル・ホールディング社と共同で「AIやその他のテクノロジーを探求する」と報じられた。さらに、サム・アルトマンは、昨年11月にOpen AIのCEOを一時的に解任されるまでの数カ月間に、サウジアラビアとUAEから数十億ドルを調達し、エヌビディアの競合となる半導体企業を立ち上げようとしていたと報じられた。
ブレイズのムナガラCEOはフォーブスに対し、同社が米国や日本、ドイツなどの中東以外にも顧客を持っていると述べたが、詳細な説明は避けた。また、ブレイズのチップとソフトウェアは各地の空港に配備され、セキュリティ映像の分析に使用されているほか、防衛分野での利用も想定していると語った。
2011年にThinCIとして設立された同社の創業チームは、ムナガラCEOを中心とする元インテルのエンジニアで構成されており、動画解析のような負荷の高いタスクなどのエッジアプリケーションに機会を見出した。同社は、ダイムラーや日本の自動車部品大手デンソーなどの戦略的投資家からの支援も受けている。
ブレイズは、ノーコードでAIアプリケーションを構築できる「AIスタジオ」を含む最初の製品群を2020年にリリースした後、フランクリン・テンプルトンやGGV、シンガポールのテマセクなどの投資家からさらに7000万ドルを調達した。
新たなライフラインを確保した今、ムナガラCEOは間近に迫ったIPOに向けて、ロードショー(機関投資家向けの会社説明会)の旅に出ている。今月の最初の訪問先はサウジアラビアで、同社はリヤド郊外の新しいデータセンターと農業用ドローンに同社のチップを導入するための合弁会社の設立に向けた交渉も行っている。
ブレイズの初期投資家のベスは、彼の投資先が新たな支援者を見つけたことに安堵している。「彼らが足場を固められたのは、中東の政府や王室がブレイズの未来に投資する意欲を持つようになったからだ」と、彼は語った。
(forbes.com 原文)