Rupee Beer(ルピービア)は1年間の研究・開発を経て2021年に初めてメイン州で発売された。弟のスミットと共同で同ブランドを立ち上げたヴァン・シャルマは、2022年から2023年にかけて売上が3倍になったと言う。現在は14州で販売され、45州の顧客に出荷されている。今年は新たに5つの州へと販路を拡大する予定だ。「欧州連合(EU)と英国で商標を登録し、今年後半に米国外の市場に参入する計画が最終段階にきている」とヴァンは話す。
ヴァンとスミットは英国生まれで、両親の米国移住に伴い、2人はメイン州ポートランドで育った。家族は何世代にもわたってインド料理レストランの事業に携わってきた。
大学卒業後、スミットはオーストラリアで接客業に就き、ヴァンは英国へ渡って法人営業をしたりスタートアップで働いたりした。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)中に2人は帰郷。両親はメイン州初のインド料理店を含む数軒のインド料理レストランを経営していた。
「パンデミックの間、インドのビールやアジアのビールは全般的に入手が難しかった。そこで弟と私は自分たちで作ればいいじゃないかと思い立った」(ヴァン)
2人は当初、家族が経営するレストランで売るラガーを作ろうと考えていたが、すぐにもっと需要があることに気づいた。最初のビールはルピー・プレミアムラガーで、まずメイン州だけで販売した。「かなり大きな反響があり、販売を拡大し始めた」とヴァンは話す。
ルピーの発想は、スパイシーなインド料理に合うビールを作るというものだった。「多くのビールは、本当に複雑な風味を持つスパイシーなインド料理に合うようには作られていない」とヴァン。「炭酸が強すぎるビールをスパイシーな料理と合わせると、ゲップがたくさん出て消化不良を起こす」のだという。
そこで2人は、バスマティ米を使った「とても軽くて滑らかで、飲みやすく、炭酸が弱い、料理と合わせるためのビール」を作った。
オリジナルのルピーが発売された後、昨年は7月22日のナショナル・マンゴー・デーに合わせて、季節限定のマンゴー・ウィートエールを発売した。「最初の生産分が売り切れたため、第2弾を醸造することになった。これは需要があることを示す明確な兆候だった」とヴァンは振り返る。
今年は7月に再びマンゴー・ウィートエールを発売し、11月にはインドの祭りであるディワリに合わせてインディア・ペールエール(IPA)を売り出す計画だ。「クラフトビール祭りではまず、『IPAを試してみたい』と言われる」とヴァン。「私たちはインド人であり、今のところラガーしかないので、当然IPAに挑戦したかった」。
だが、2人が作ったIPAは、輸送するためにビール樽に防腐作用のあるホップを余分に入れて英国からインドまで運ばれたオリジナルのIPAに近いという。「もう少し苦味が少なく、オリジナルのスタイルに近い、食事と一緒に飲むためのビールに近いものを作りたかった」とヴァンは言う。「発売予定だったものは、発売前に予約で完売した」。
ルピー・ビールのブランドが成長する中で、ヴァンによると、新しい市場のビール販売業者の多くは、それまでインド料理レストランへと販促をかけることを考えたことがなかったという。だが、そこがルピーにとっては販売を伸ばせるところだ。「インド料理レストランはこれまで、あまりそういう形で注目されたことはなかった。私たちは東洋と西洋の伝統のバランスをとっている」とヴァンは語る。「ビールにおいて、このような興味深い時にいることに感謝している」。
(forbes.com 原文)