ビッグモーターと「真逆」のスタンス。車検館が過去最高益へ

2023年、最も注目を集めた企業の不祥事といえば、やはりビッグモーターではないだろうか。

ドライバーやゴルフボールで車にわざと傷をつけ保険金を不正請求するなど、「売上至上主義」に邁進する企業姿勢が大いに問題となった。ビッグモーターのみならず、自動車整備業界全体に不信感を抱いた方も多いのではないだろうか。

そんな不信感の霧に覆われた自動車整備業界で、ビッグモーターと完全に真逆のスタンスを貫いたことで、業績を急成長させている企業がある。日産東京販売ホールディングスに属する車検館(東京・八王子市)だ。

同社の今年度の上半期決算では、売上高は7億3240万円(対前年比107%)、営業利益は1億5550万(対前年比129%)となり、営業利益は過去最高を記録した。10年間で実に5倍近い伸びとなっている。今期は年間でも過去最高益を更新する見通しだ。

「整備士が主役」を徹底

「車検館が近年好業績を達成し続けている理由は『売上・利益至上主義』『現場への厳しいノルマ』とは、まったく正反対の姿勢を貫いているからです」

こう語るのは、伏見一洋社長。正反対の姿勢とは、「整備士が主役」という体制を徹底し、顧客に対しても整備士を前面に打ち出しているというもの。実は伏見社長自身も入社以来、長らく整備士として勤めてきた。それだけに「誰よりも整備士の気持ちがわかる経営者」なのだ。
車検館代表取締役社長 伏見一洋

「整備士が主役」とは具体的にどのような体制なのだろうか。車検・整備を行っている企業では一般的に顧客対応は整備士とは別の接客専門スタッフが行い、「整備士は整備するだけ」という役割分担を徹底している。

だが、車検館では顧客への車検・整備の内容の事前案内から整備完了後の顧客への説明まで、すべて整備士が行う。まさに、1台の車を整備士が最初から最後まで責任をもって顧客に送り出す体制を敷いているのだ。他社と比べて整備士の負担が大きいようにも見えるが、なぜこのような体制をとっているのだろうか。

「整備士は、整備の前後でお客さまの愛車に対する想いに直接触れることになります。さらにお客さまから『感謝の言葉』を直接頂けます。この『顧客と接する』というやり方は、整備士の仕事へのやりがいを高めています。お客さまの顔を見て整備するのですから、不真面目な仕事などしようと思うはずもありません」(伏見社長)
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文=下矢一良

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