経営・戦略

2024.01.20 10:00

ビッグモーターと「真逆」のスタンス。車検館が過去最高益へ


自動車整備業界の事情通は「今はビッグモーターの整備士にとって、居心地の良い状態だからではないか」と話す。
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国土交通省はビッグモーターの全国34工場に対し、指定自動車整備事業の指定取り消しや車検業務の停止などの行政処分を出した。この事情通によると、この行政処分によって、ビッグモーターの整備士は結果的に「整備のなかでも面倒な仕事」から解放された状態なのだそうだ。

加えて給与は、業績連動給がなくなったとはいえ、業界内でもまだ高い水準。給料は高いのに、面倒なことはしなくて良い状態だ。

だが、「束の間の楽園」は決して永遠ではない。ビッグモーターが買収され、新体制に移行すれば、経営再建に向けて、労働環境が業界水準に落ち着くのは必定だ。冬の賞与が出てひと段落した今月以降、徐々にビッグモーターの整備士が転職市場に出るようになるのではないかと、この事情通は予測している。

ビッグモーターを辞めた整備士が入社

さて、これまで広告はおろか、広報にまったく取り組んでこなかった車検館だが、好業績を追い風にこの秋から広報活動にも取り組み始めた。
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そして広報開始からわずか2カ月で、テレビ東京の『ガイアの夜明け』で取り上げられたのだ。2023年12月22日放送の「追跡!ビッグモーター」と題した回だ。

番組はタイトル通り、ビッグモーターの再生への動きに焦点を当てたものだった。にもかかわらず車検館が取り上げられたのは、ビッグモーターを辞めた整備士が入社しようとしていたからだった。

番組では、その整備士が前職時代の状況を振り返ると同時に、「真面目に仕事に取り組みたいから転職した」という真摯な想いを打ち明けた。また番組内で自らも整備士であった車検館の社長が整備業界をめぐる近年の変化についても説明した。

車検館が手がける車検、あるいは整備は決してテレビに出やすい業種ではない。だが今回は、ビッグモーターという極めて社会的注目度の高い企業と対比される形で取り上げられた。自社単独で勝負しようとせずに、社会の大きな流れを味方につけるのは中小企業にとっての広報必勝策と言える。

なお同社では、テレビだけではなく国土交通省の担当記者にも自社の取り組みを文書で送ったことで、複数の全国紙から取材されることになった。

「これからは広報活動を通して、お客さまはもちろんのこと同じ整備業界で悩んでいる整備士たちにも、私たちの仕事ぶりを伝えていきたいですね。ひとりでも多くの整備士に『誠実な仕事を続ければ、整備士として報われる』ことを知って欲しいのです。真面目な仕事が報われる業界をつくっていきたいと、強く思っています」(伏見社長)

文=下矢一良

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