拡大を続けるアドビのユーザー。ニーズも多様化
アドビのアプリケーションといえばPDFドキュメントの作成・編集に使う「Adobe Acrobat」や、カメラマンの定番写真編集ツールである「Adobe Photoshop」などが広く知られているだろうか。現在はPhotoshopのようにデスクトップとモバイル、ウェブ版などユーザーが使用する環境に合わせて複数のバリエーションを用意するアプリケーションもある。無料のスタータープランも人気のデザインツール「Adobe Express」や、独自の生成AIで画像制作ができる「Adobe Firefly」のように比較的新しい製品と、アドビが長く提供するプロフェッショナル向けのクリエイティブアプリケーションとの間ではユーザーインターフェースのルックとフィールに少なからぬ違いがある。
スノーデン氏は初代のスペクトラムが誕生した2013年当時に比べて、今はアドビのアプリケーションがプロのクリエイター以外にもさまざまなユーザーに使われるようになったと話す。近年はその裾野がアマチュアのコンテンツクリエイターから学生、中小企業のオーナーに広がり、さらにAdobe Fireflyの生成AIをきっかけにアドビのことを知らなかったユーザーにも拡大しているという。
全製品のデザインと体験をより親しみやすくして、ユーザー層を拡大することがスペクトラム2を開発するスノーデン氏率いるデザイン担当チームに課せられた大きな使命だ。
スペクトラム2は2024年の初頭からアドビによるすべての「ウェブ版」アプリケーションに採用され、以降はモバイル、デスクトップにも順次展開を予定する。ユーザー体験はどう変わるのだろうか。
スペクトラム2で変わるユーザー体験
従来デスクトップ版アプリケーションのグレーを基調とするミニマルなデザインに比べると、スペクトラム2のユーザーインターフェースは一見してよりカラフルになった。アプリケーションの画面の色使いは、さまざまな色覚障がいを持つユーザーも心地よく使えるよう丁寧に微調整を行っている。例えばウェブ版Adobe Acrobatのドキュメントエディターはアイコンやテキストボックスなど各コンポーネントの配置と色使いを含めた視認性が高い。
もう1つウェブ版Adobe Photoshopも例に挙げよう。従来製品のデザインに並べてみると、パネルやツールバーに並ぶアイコンが丸みを帯びた柔らかなフォルムになった。クリーンで親しみやすい印象をもたらすことも、スノーデン氏たちがスペクトラム2のデザインを決める上で大事にしてきた。
スペクトラム2のコンセプトは、アドビ製品の中でも特にクリエイティブワークのビギナーに親しまれているAdobe Expressのアイコンやタイポグラフィなどのコンポーネントから先に実装されてきた。文字は見やすくなるように少し太くして、ユーザーインターフェースの色調を明るくした。Adobe Expressのユーザーから「親しみやすい」と評価された要素がスペクトラム2の礎になった。