だが、企業や学校、事業などで時間とお金を節約する使用例を、技術者がどんどん発見するにつれて、世界中で「現実の世界」におけるこの技術の適切なバランスを見つける苦労も増えている。
今年に入り、AIの急速な登場と普及は、急速な技術革新と競争力の飛躍をもたらしただけでなく、道徳的・倫理的な議論を次々に巻き起こし、世界中でAIの実装に関する規制が作られたり、行政命令が出されることにもなった。同時に、安全で経済的に持続可能なAIの実装におけるオープンなフレームワークと、より大きな標準を開発しようとするグローバルな提携(最近のMeta + IBM AI Allianceのような)も生まれた。
とはいえ、今年はエキサイティングなテクノロジー・ストーリーが毎日のように押し寄せる変革の年だった。以下に示すのは、生成AIの2023年における簡単な歴史と、それが今後、私たちにとってどのような意味を持つかである。
生成AIの1年:その始まりは?
簡単に振り返ると、生成AI(ジェネレーティブAI)は1年前、ChatGPT(チャットジーピーティー)の登場とともに世界を席巻した。OpenAI(オープンAI)という人工知能開発企業によって発表されたこの技術は、それから数日の間に、ビジネスから教育まで、私たちが物事について考える方法を一変させた。特別な訓練を受けた人でなくても、手紙、回顧録、テレビ脚本など、ほぼあらゆるものを、ボタンをクリックするだけで書くことができるようになったのだ。ユーザーがすることといえば、いくつかキーになるプロンプトを入力することだけだ。たとえば「2023年を舞台に、『エイリアン』に似た、より若い出演者による映画の脚本を作成する」と入力すると、ChatGPTはほぼ瞬時にそれを出力する。
このテクノロジーは極めて刺激的であり、それと同時に、ジャーナリストからハリウッドの脚本家、標準的な大学の小論文に至るまで、私たち人類が当たり前のように受け入れてきたあらゆるものの置き換えを予想させるものだった。結局のところ、一般的な人の目には、それがAIによって作られたのか、それとも人間によって書かれたのかを判断する方法はほとんどない。この問題は、生成AIの道徳的使用に関する警鐘を鳴らしただけでなく、AIが自分たちの役目を絶滅させかねないと懸念するテレビや映画の脚本家たちによる、約5カ月に及ぶストライキを引き起こした。
しかし、私たちが過去1年間に学んだように、生成AIはChatGPT以上のものだ。そこには、会議での会話を録音して書き起こすアプリから、電子メールの返信を作成するアプリ、ナレーションを生成するアプリ、そして「オリジナル」のアートやロゴを生成するアプリまで、あらゆるものが含まれている。生成AIはあらゆるものを創造する力を持ち、今日のビジネスにおいて時間とコストを節約する可能性を提供すると同時に、成長と投資の新たな機会を生み出している。
実際、2022年11月にChatGPTがリリースされて以来、生成AI機能は世界経済に年間4.4兆ドル(約620兆円)もの利益をもたらす可能性があるとの調査結果が出ている。良くも悪くも、注目を集めるのは不思議ではない。