「お返し」を重んじる日本人に。お金の代わりに行動を支払うフードパントリー


「日本においてフードバンクのパイオニアであるという自負のもと、私たちは支援の質の向上に寄与したいと考えています。現在、これからフードバンクやフードパントリ―を始めたいという団体には立ち上げのための説明会や食品の提供という中間支援を行なっているのですが、運営に関しての勉強会など継続的なフォローアップもしなくてはいけない。わかってはいても、現状では、充分な余力がないのが正直なところです」

これまで築き上げてきた膨大なネットワークを持ってしても、一団体としてできることには限りがある。そこで、これら支援の公益性をさらに向上するべく、積極的な政策提言を行なっている。

「私たちが目指している“誰もが食にアクセスできるフードセーフティネット”を構築するために、行政的あるいは法的にハードルになるもの、欠けているものがあればそれを提案書として提出しています。過去には、政府備蓄米を食支援団体に提供できるよう運用を変更したという例もあります。私たちは日本のフードバンクに関わる人々の声を行政にも伝えるべく尽力しています」

現在、沖縄でmarugohan同様のコンセプトでフードパントリーをトライアル運用中だ。今後は地域文化との親和性を見ながら、拡大展開も検討していく。すべてのステークホルダーと大きな循環の輪の中で平等に肩を並べ、輪に関わる実感を一人ひとりの希望につなげていく。

「marugohanの “恩返し”が根付くのは、正直何年後になるか分かりません。とても難しいコンセプトを掲げているとも思いますが、私たちは挑戦していきます。サービスラーニングで、自分をどう捉えるかという“ポジショナリティ”という言葉があります。2020年の全米オープンで、大坂なおみ選手がBlack Lives Matterの抗議行動として犠牲者の名前が書かれたマスクを付けられましたよね。自分が大切だと思うことを自分のできる影響力を持って、テニス以外のところまで広げたわけです。誰でも必ずできることがあります。きっとその行動が希望を作っていくと思います」


横手 仁美(よこて・ひとみ)◎上智大学外国語学部卒。慶應義塾大学経営管理研究科卒(MBA)
在シドニー日本国総領事館、ソニー株式会社、日本トイザらス執行役員、国連WFP協会事務局長、ベンチャー企業勤務を歴任。2018年から2023年3月まで国際基督教大学サービスラーニングセンター勤務。現在、森六ホールディングス社外取締役、学校法人アジア学院評議員、NPO法人国際人材創出支援センター(ICB)理事

文=佐藤祥子

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