“誰もが食にアクセスできるフードセーフティネットの創出”をビジョンに掲げ、中長期戦略として、「ソーシャルインパクト」「持続可能な組織」「コミュニティ」の3つを軸に活動している。
東京の東神田で2023年12月にリニューアルオープンしたばかりのmarugohanは、木・金・土曜日の3日間、1日5時間だけ開く会員制のフードパントリーだ。まるでスーパーマーケットのような施設内では、食品企業などから寄贈された食品の中から好きなものを選ぶことができる。これまでの食糧支援のイメージが覆される店舗だ。
冷凍・冷蔵庫が完備され、野菜や卵、肉など生鮮食品が並ぶのが大きな特徴だ。
さらに特筆すべきは、食品と引き換えにここで支払うのが、お金ではなく「自分以外の誰かのためになる“社会的な行動”」であることだ。
これは、日本人特有の“慎み深さ”、“謙虚さ”、“お返しを重んじる”といった国民性に基づくアイデアだ。marugohanでは、食品と引き換えに人々のためになる“行動”で社会に「恩返し」をすることを提案している。
食品受け取り時に社会貢献活動をスタッフから案内される。活動内容は、道端に落ちているゴミを拾う、困っている人を助ける、など小さなことでもいい。
セカンドハーベスト・ジャパン マネージャーの武田幸佳さんはその狙いについて次のように話す。
「これまでのフードパントリー活動では、食品を選べないという声や、支援を受けることに抵抗を感じるという声が多く挙がっていました。そこで、とにかく気軽に利用しやすいスーパーマーケットのような仕組みを設計しました。自分が必要で、食べたい、食べられるものを選べることで、楽しさだけでなく受け取った後のフードロスの削減にもつながります。さらに、お金を払わないから引け目を感じるという部分を、社会貢献につなげることによって意識を変革しました」
marugohanは、2020年からのパンデミック下で1日300人が途切れることなく訪れるほど人気に。現在も1日100人が訪れる。コロナ前は外国人の割合が高かったが、コロナ禍以降は日本人の利用者も増え、学生、共働き世帯と、これまで利用が少なかった層からの需要も高まっている。