宇宙

2023.12.31 16:00

月面での人間の活動がその環境を汚染、月を覆う塵の雲が生じる怖れ

アポロ15号の有人月面着陸ミッションで使用された月面車(NASA)

南オーストラリア州立フリンダース大学考古学部の宇宙考古学者アリス・ゴーマンは、月での人類の活動の活発化によって、月の人新世と呼べるような地質学的指標が残る可能性が高いと、インタビューで述べている。だが、月の人新世は、地球の人新世と同じように論争の的になると、ゴーマンは考えている。ゴーマンは「20世紀に他と明確に異なる地質学的期間を作り出したのは、生物種としての人類ではなく、西洋の植民地主義の、産業国の少数グループだ」と指摘する。「1967年の宇宙条約によれば、宇宙は全人類の領域とされている。だがこの場合もやはり、月の『自然な』地質学的および宇宙的過程に介入して人新世を作り出す力を有する一部の人類を目にしている」と、ゴーマンは続けた。
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月面に残された人的活動の痕跡の例(Holcomb et al)

月面に残された人類による活動の痕跡の例(Holcomb et al)

人類の影響

月の人新世の考え方は、人類が月におよぼす影響を浮き彫りにし、月は不変の環境だとする誤った通念を打破すると、論文の執筆者らは考えている。探査車や着陸機の影響は今や、隕石衝突や地質学的現象よりも重大だと、論文の執筆者らは主張している。

2022年3月4日、使用済みのロケットの一部が月面に衝突し、直径約29mのクレーターができた。11月に発表された論文によると、これは中国のロケットの残骸だという。

月のクレーターの大半は、約41億~38億年前の後期重爆撃期に形成された。「月に現在起きていることを『新爆撃期』と呼んでいる。この場合はまさに人類が原因の衝突であることを特徴とする」と話すゴーマンは、これによって形成されるクレーターを「文化的クレーター」と呼んでいる。
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「月に関して忘れてはならないのは、地球にあるような、ダメージから回復可能な生きた生態環境は存在しないことだ。つまり、人類の活動によって生じる変化の多くは、元に戻らないわけだ」と、ゴーマンは説明した。惑星科学者らは、月で水の循環がどのように機能しているかを理解し始めたばかりだと、ゴーマンは付け加えた。
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翻訳=河原稔

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