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2024.01.04 11:00

共産主義国家で生まれてウォール街で富豪になったピーターフィーの投資観

日下部博一
フォーブス:話の時間軸を戻すと、現在の市場をどのように見ているか。また、現在の投資戦略の指針は?

ピーターフィー:私の資金の大半はまだインタラクティブ・ブローカーズで投資に使われている。それ以外に数億ドル持っていて、株にもいくらか投資しているが、年を重ねるにつれて、利益よりも資本の保全に関心が向くようになった。混沌とした状況になっても、どこに投資すれば資本の価値を保てるか。それが私の関心事だ。

私は私有財産が認められていない社会主義国で育った。すべては国民の名において、国家によって共同所有されていた。集産主義体制がもたらす悲惨な状況を目の当たりにしてからは、資本の保全と自由市場経済の維持が常に最重要事項だ。なので私は20年後を見据えて「米国やその他の国が私的所有権を尊重し、擁護する可能性はどれくらいか? 投資するのが理にかなう場所は他にあるか?」と問う。各地域でさまざまな政治的な動きがあるため、こうした可能性は変動している。

フォーブス:民間企業の立場から投資してもいい国や地域はあるか?

ピーターフィー:私が注目しているのは、社会主義がやってくるかもしれない場所だ。米国がその1つになるかもしれない。なので「米国に全面的に投資するのではなく、民間企業が生き残るという期待ができる他のどこの国で投資すべきか?」と自問している。ニュージーランドやオーストラリア、カナダ、英国、南米、そしてサウジアラビアやアラブ首長国連邦のような場所に目を向けている。こうした国々が今、米国より良いとは言わないが、状況は変わりつつあるかもしれない。米国はより集産主義的な社会になりつつあるかもしれない。それでは、資本主義が生き残る可能性があるのはどこなのか?

私は基本的に、投資方法に重要な秘訣はないと考えており、他人から学べることも多くはないと思っている。すべて論理的だ。事実をよく知っているほど、そして多くの事実を知っているほど、投資家として良い仕事ができる。このようなビジネスに長年携わる中で私が学んだことは、自分のすべき仕事をやることに代わるものはないということだ。

フォーブス:これからの投資家に何かアドバイスは?

ピーターフィー:もし私が投資の世界に足を踏み入れる若者だとしたら、ある分野について勉強し、その分野とその分野の企業に特化するべきだと思う。では、私ならどの分野を選ぶだろうか? エネルギーの調達や生産、流通、そして現在採用されている、また将来採用されるであろうさまざまなテクノロジーを選ぶと思う。グリーンエネルギーと従来のエネルギー、二酸化炭素排出量の削減方法といったものを考えて、エネルギー分野でキャリアを始めるだろう。それは投資家として特化したいと思える、とても魅力的な分野だ。

フォーブス:投資家にお勧めの本はあるか?

ピーターフィー:投資に関する本は読んだことがない。前述の通り、すべて論理的だと思う。単純な事実について取り組み、よく勉強する必要がある。そういうものだ。投資の本を書いている人は、なぜ書くのか自問しなければならない。なぜそんなことをするのか? 本当に何かを知っているのなら、それは自分の胸にしまっておくはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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