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2023.12.07

片目を失い見えた成功 アメリカンドリーム体現したチャーリー・マンガーの人生

Kent Sievers / Shutterstock.com

11月28日に99歳で亡くなった投資家チャーリー・マンガーの人生は、努力すればより良い暮らしが得られるという「アメリカンドリーム」の輝かしい例だ。今の時代、アメリカンドリームについて多くの人が疑念的になっているが、マンガーの軌跡は、フォーブスがまとめる米長者番付「フォーブス400」の最新データと相まって、アメリカンドリームが今も生きていることを改めて示している。

マンガーの人生は、ウォール街の魅力とはほど遠い、中西部ネブラスカ州で始まった。若い頃は苦難が多く、結婚したものの当時としては珍しく離婚に至ったりしたため、資産はほとんどなかった。

だが、苦境はそれで終わりではなかった。息子のテディが白血病を患い、その治療費を全額負担することを強いられたマンガーは、経済的に追い詰められた。悲しいことに、テディはわずか9歳でこの世を去り、マンガーは打ちのめされた。

結婚生活の失敗、経済的破綻、最愛の息子の死、そして白内障手術の失敗による左眼球の摘出など、抗しがたい試練を経験して、マンガーは多くの人が屈してきた堕落の道への誘惑にかられたのではないだろうか。

マンガーにとって幸運なことに、ちょうどその頃、同じくネブラスカ州オマハ出身の風変わりな投資家、ウォーレン・バフェットと出会った。バリュー投資を行う2人は共に、バークシャー・ハサウェイという経営難に陥っていた古い繊維会社の株を買い始めた。ここから先はご存知の通りだ。

1992年から2022年までの間、バークシャーは年平均成長率(CAGR)13%を達成し、この間のおおよそ3分の2は年率でS&P500の平均を上回った。マンガーがバークシャーに入社した1978年に投資家が100ドルのバークシャー株を買っていたとしたら、その価値は今日、約40万ドルになっていただろう。

アメリカンドリームは危機に?

「アメリカンドリーム」という言葉を生み出したのは、ピューリッツァー賞を受賞した歴史家のジェームズ・トラスロー・アダムスだ。アダムスは1931年にこれを、「あらゆる階級の市民が生活をより良いものに、そして豊かで満ち足りたものにする夢」と定義した。アメリカンドリームは今も真実なのだろうか。今日、多くの米国人は考え込まずにはいられない。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルと全国世論調査センター(NORC)がこのほど共同で実施した調査によると、米国人の成人のうち、アメリカンドリームを信じているのはわずか36%で、2012年の53%、2016年の48%から大幅に減少。回答者のおよそ3分の2が、アメリカンドリームはかつては実在したが今はもう存在しない、あるいは最初から存在しなかったと答えている。さらに、半数の人が米国での暮らしは過去50年で悪化したと考えている。
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翻訳=溝口慈子

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